※本記事では、ITストラテジスト試験の午前I〜午後Iまでを扱います。
試験のヤマ場である午後IIは、別記事にて詳しく解説致します。
前書き
私は2022年4月に実施されたITストラテジスト試験に合格することができました。
幸い、独学・ストレートで合格することができ、また幾つか高度情報処理技術者試験も持っているので、試験勉強に関するナレッジも蓄積している…と思っています。
今後ITストラテジスト合格を目指す方の参考になればと思い、テクニックを一挙大公開です。
ITストラテジスト試験概要
まずは、試験についておさらいです。
ITストラテジスト試験は、IPAが所管するIT系の国家試験です。
ITスキル標準のレベル4に該当し、試験で測れる範囲では最高難易度の「高度情報処理試験」に該当します。
また、一般的にはレベル4の中でも難易度が高いとされています。
対象者像
ITストラテジストの対象者像としては下記になります。
https://www.jitec.ipa.go.jp/1_11seido/st.html
高度IT人材として確立した専門分野をもち、企業の経営戦略に基づいて、ビジネスモデルや企業活動における特定のプロセスについて、情報技術(IT)を活用して事業を改革・高度化・最適化するための基本戦略を策定・提案・推進する者。
また、組込みシステム・IoTを利用したシステムの企画及び開発を統括し、新たな価値を実現するための基本戦略を策定・提案・推進する者。
要約すると、ITを理解するだけではなく、ITの活用を前提とした経営戦略の立案や提案ができる人、ということですね。
会社のCIOや情報システムの部門長、ITコンサルタントのレベルということができます。
試験時間・出題形式・出題数(解答数)
各時間区分共に100点満点中60点以上で合格となります。
詳細は、IPAのサイトを参照してください。
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:制度の概要:ITストラテジスト試験
勉強時間(筆者スペック)
ここで、ご参考までにNaoの勉強時間およびスペックについても触れておきます。
- 業務:SIer勤務、インフラ保守運用メイン
- 保有資格:
ITサービスマネージャ、情報処理安全確保支援士、応用情報技術者、基本情報技術者 - 勉強時間:
午前I:10時間
午前II:5時間
午後I:25時間
午後II:60時間
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計100時間程度 - 勉強開始:2022年2月~4月(約2.5ヶ月程度)
受験時は久しぶりの高度情報技術者試験ということもあり、午前Iからの受験でした。
また、高度試験については何度か受験していることから、ある程度試験のお作法は理解している、という状態ですが、ITストラテジストの業務については実務経験はあまり無い、というのが正直なところです。
あとは中小企業診断士の学習、1次合格経験の知識がある、という背景があります。(この辺りは後述)
攻略法
午前I
午前Ⅰは過去問をひたすら暗記します。
技術者としては、勿論内容を理解しておいた方がプラスではありますが、細かい内容まで網羅しようとするといくら時間があっても足りません。
(いまだに、論理積・論理和などの回路図を理解しているかというと、大いに怪しいレベルです。。)
私の場合、隙間時間で下記の過去問アプリをひたすら繰り返す形で覚えました。
過去問10回分(5年分)を何周かして、最終的に安定して9割取れれば大丈夫です。
午前II
午前Iと同様、基本的には過去問を暗記していきます。
全試験共通の午前Iと比べ、午前IIは各試験固有のカラーが出てくるので、好き嫌いが分かれてくるかもしれません。
ただし、対策としては午前I同様、過去問を暗記していきます。
こちらは技術者試験御用達の、過去問対策.comにお世話になりました。
午前Iよりもより専門的、言い換えると範囲が絞られているので、試験対策という意味で言うと午前Iよりも難易度は低いかもしれません。
これも過去問10年分を5周ぐらいして、8割取れる状態になっていれば本番でも大丈夫でしょう。
余談ですが、ITストラテジスト午前II試験とシナジーがある別資格として「中小企業診断士」が挙げられます。
中小企業診断士は経営コンサルタントの国家資格なので、ITストラテジストとの親和性が高く、午前IIの試験内容でもオーバーラップする点が多く見受けられました。
午前IIのために中小企業診断士を勉強する、という必要はありませんが、ITストラテジストと中小企業診断士のダブルライセンスを目指す人も多いので、興味のある方は調べてみてください。
午後I
午後Iは筆記試験で、設問4つの中から2問を選択し解答します。
この午後IからがITストラテジスト試験の本番と言えます。
勉強のポイント
午後I学習の大方針としては下記を繰り返すことです。
- 過去問を解く&答え合わせをする
- 間違った部分について、模範解答と自分の解答の差異を分析
- 「どのような着眼点であれば模範解答が導けるか」を分析
過去問を解く&答え合わせをする
基本は過去問です。
出題形式や解答方法に慣れる意味も含めて、過去問を解いて、自分の答えと模範解答を見比べてみます。
最初はあまり時間制限にはこだわらず、まずは過去問を解いてみましょう。
模範解答と自分の解答の差異と原因を分析する
勉強する上で大事な点が、間違った部分について模範解答と自分の解答の差異を分析する、という工程です。
いわゆる「振り返り」ですね。
よくあるパターンが、「模範解答はこういう風になるのか。なるほど~。」で終わってしまうパターン。
解答を「知った」だけで満足してしまい、脳に定着していない状態です。
大事なのは、なぜ模範解答はそのような解答になったのか、なぜ自分の解答は模範解答と差異が出てしまったのか、という原因分析をすることです。
午後Ⅰ対策は「量より質」です。
過去問を大量に解くよりも、振り返りの深さが重要です。
「どのような着眼点であれば模範解答が導けるか」を分析
ここで重要なことは「思考プロセスと解答プロセスの標準化」です。
午前問題と異なり、午後問題は過去と同じ問題が出題されることはありません。
そのため、必ず初見の問題となります。
そのため、学習にあたっても必要となるのは「過去問を完璧に解ける」ことではなく「初見の問題にいかに対応できるようになるか」をメインに考える必要があります。
そのためには、問題文や設問文を読むときの着眼点、着目するキーワード、解答の組み立て、などの解答プロセスを極力標準化し、
「どんな問題が出題されても、安定的に得点できる」状態が望ましい、と言えます。
参考までに、私が標準化したプロセスを記載します。
時間配分
①解答する問題の選択:5分
午後Ⅰ試験では、4問出題される中から2問を選択して解答します。
しかし、4問の問題文・設問文をじっくり読んでいる時間は無いので、ある程度斜め読みして答えられそうな問題を選択します。
②問題文を読んで全体を把握&マーキング:10分
解答する問題を決めたら、①よりは詳しめに問題文を読み進めていきます。
具体的な解答プロセスは後述します。
③問題を解く:35分
④見直し:5分
解答プロセス
①問題文にマーキングする
- 問題文を読む
- プラス要因は問題文の左側に⊕記号を記入
- マイナス要因は問題文の右側に⊖記号を記入
- その他、キーポイントと思われる部分に下線、マルを付ける
②設問をキーワードに分解する
- 設問文を読む
- 設問文をキーワードに分解する
- 分解したキーワードについて、問題文中に同様のキーワードがないかを探す。
→①にてマーキングした箇所をヒントに、効率的に関連個所を見つける。 - 問題文中にあれば、設問番号を記入して紐づけする
③解答を作成する
- ②で抽出したキーワードを組み合わせる&関連知識をもとに、解答を作成する
問題文で注意するポイント
問題文中に下記の表現がないかを機械的にチェック。
※下記表現の周辺には、論点となるポイントや重要な記述がされている可能性が高い。
- 「問題点」
「〇〇が求められている」「〇〇が課題となっている」という記述は「要望」や「要求事項」になるので、必ずチェック! - 否定的な表現
「○○ができていない」「○○が無い」:高確率で論点となる
同様に、以下のような表現の周辺には重要な論点が記述されている可能性が高いので、
注意して問題文を読んでチェックしていきます。
- 「なお」「ところで」
- 段落末の短い表現
- 注釈
- 不自然な表現、違和感がある記述
- 経営方針・経営者の言葉
勉強方法
解答時間の目安としては、1問につき40分程度ですが、答え合わせと振り返りも含めると60分~1時間半程度になるかもしれません。
必ずしもまとまった時間が取れるわけではないと思うので、こちらは例えば設問ごとに分割しても構いません。
ただし推奨としては毎日、あるいは2日に1回ぐらいのペースで継続的に取り組む方がおすすめです。
要は、「2月は午後Ⅰに集中して、3月は午後Ⅱに集中しよう!」ではなく、
「今日は午後Ⅰを1時間、午後Ⅱを1時間」とか「今日は午後Ⅰ、明日は午後Ⅱ、あさっては午後Ⅰ…」という感じですね。
理由としては、下記が挙げられます。
①忘却曲線の理論に沿って、記憶の定着を図るため
忘却曲線については、ご存じの方も多いかと思いますので割愛。
②試験日までのピーキングを意識するため
資格試験においては、「ピーキング」はとても重要です。
試験合格のためには、試験日当日に、知識・モチベーション(と体調)を最高の状態にしておくことが必要です。
そのためには、
- 午前Ⅰ~午後Ⅱの知識をアジャイル的に高めていく
- 時々、マイルストーンを置く(模試や添削サービスなど)
といった進め方で、徐々に知識を高めていく、というやり方の方がピーキングしやすい、というメリットがあります。
どんな人が合格しやすい?
5教科で言うと、「国語」が得意な人は有利と言えます。
これは、問題文の題意を正確に把握し、関連するキーワードをピックアップして解答を組み立てる、という作業が必要になってくるので、どうしても国語力が必要になってくる、という面もあると思います。
ITパスポート~応用情報処理技術者や他の高度試験がSE(システムエンジニア)向けであるのに対して、特にITストラテジスト試験は経営や組織に関する内容を含むことから、SEとして経験を積んできた人には、やや分野が異なるように感じられることもあるかもしれません。
しかし、ITストラテジストの対象者像は「会社のCIOや情報システムの部門長、ITコンサルタント」です。
CIOに必要となる能力は、プログラミングやネットワーク技術というよりは、ITを経営に活用し、方向性を決め判断する能力でしょう。
そのような対象者像からすると、問題文から現状を読み取り、問題課題を把握し、どのような対応をするか。
実務においても、テクニカルスキルよりもコンセプチュアルスキルが求められる割合が高い、という点が、試験にも反映されている…と思われます。
おススメの参考書
午後Ⅰ・午後Ⅱ問題について、詳細な解法と豊富な事例解説が掲載されています。
午後Ⅱ対策>別記事にて解説
ITストラテジスト試験の最大のヤマ場である午後Ⅱについては、別記事にて詳しく解説致します。
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いかがでしたでしょうか?
本記事が、皆さまのITストラテジスト試験合格のお役に立てれば幸いです。