ご参考までに、2022年4月のITストラテジスト試験の際にNaoが実際に解答した内容を掲載します。
試験日翌日に再現答案を作成したので、再現率としては結構高いはずです。
振り返ると、設問間の整合性はもうちょっと綺麗にしたかった、というところはありますが、問題文の趣旨については盛り込むことができたのが、合格ラインのポイントであったかと思います。
ご参考になれば幸いです。
論文作成時に気を付けたポイント
- 問題文の趣旨(=書いて欲しいこと)を満たしているか
- 質問文、設問ア~ウの整合性が取れているか
※以下の再現答案にて、設問ア、イ、ウについてそれぞれ問題文の趣旨となる部分と、それに対応する部分についてアンダーラインを引いています。
どのように問題文の趣旨について触れているか、の参考にしてください。
【問題文】2022年4月_午後Ⅱ_問1
問題文タイトル:
「ITを活用した顧客満足度を向上させる新商品や新サービスの企画について」
※問題文の全文については、下記IPAサイトを参照ください。
2022r04h_st_pm2_qs.pdf (ipa.go.jp)
設問文:
設問ア
あなたが携わったITを活用した顧客満足度を向上させる新商品や新サービスの企画において、事業概要、顧客満足度を向上させることが必要となった背景を、事業特性とともに800字以内で述べよ
設問イ
設問アで述べた顧客満足度を向上させるために、ITを活用してどのような新商品や新サービスを企画したか。
顧客との接点や関係性、新たな価値、扱うデータを明確にして、800字以上1600字以内で具体的に述べよ。
設問ウ
設問イで述べた顧客満足度を向上させる新商品や新サービスの企画について、経営層に何を提案し、どのように評価されたか。
経営層の評価を受けて改善したこととともに、600字以上1200字以内で具体的に述べよ。
【再現答案】実際に解答した内容
質問書に記述した論述タイトル
「AIチャットボットを活用したサービスデスクの顧客満足度向上の新サービスについて」
第1章 顧客満足度向上の新サービスの企画
1-1.事業概要
A社は大手不動産グループのグループ会社である。主な事業内容としては、グループ会社向けにPCやネットワーク、複合機といったITインフラをシェアードサービスとして提供している。グループ会社向けのため、競合は少ない環境であるが、近年安価なITインフラサービスの増加により、売上は伸び悩んでいる。そのような環境の中で、A社経営層は「顧客満足度の向上による売上向上」「費用削減による収支の改善」を事業目標として掲げている。私はA社経営企画室に所属するIT ストラテジストであり、事業目標達成のための企画に携わった。
1-2.顧客満足度向上の必要性の背景、事業特性
A社では提供しているITインフラ環境について、総合問合せ窓口としてヘルプデスクサービスも提供している。ヘルプデスクは直接の顧客接点であり、その品質が顧客満足度に直結するため、重要な機能である。その一方で、繁忙期には電話が取れない(以下、放棄呼という)ことがあったり、繁忙期には要員の残業で対応し、費用として収支を圧迫するなど、課題も多い。
事業特性としては、電話での問い合わせが多いこと、年間で繁閑の差が大きいこと、が挙げられる。
私は、事業目標の達成のためには、ITを活用した新サービスが必須であると考えた。
第2章 ITを活用した新サービス
2-1.顧客との接点や関係性
私が提案したのは、AIチャットボットを活用した新サービスである。AIチャットボットはAIを用いた問い合わせの自動応答システムである。ヘルプデスクのポータルサイトに設置されたウィンドウに、問合せ者が質問内容を入力すると、AIが問い合わせ内容を分析し、ポータルのナレッジにある最適なFAQを回答する仕組みである。
顧客との接点 については、現在は電話にかたよった接点となっており、放棄呼が多い。AIチャットボットを新たな接点することで、電話だけではなくチャットという顧客接点を増やし、電話での問い合わせ数の緩和を図る狙いである。
関係性としては、電話の繋がりにくさはそのまま顧客満足度の低下に直結する。電話での繋がりやすさを確保することで、顧客満足度の向上と関係性の強化につなげる狙いである。
2-2.新たな価値
新たな価値としては、「自己解決率の向上」である。サービスデスクが実施している顧客満足度調査によると、サービスデスクの営業時間外にも問い合わせをしたい、電話をせずとも解決したい、という顧客の声が多かった。これに対して、AIチャットボットにて問合せ者が自分で質問内容を解決する、という価値を提供することができると考えた。
2-3.扱うデータ
扱うデータとしては、AIチャットボットに入力された質問内容と、それに対する回答および解決情報である。質問者が入力した質問に対して、AIチャットボットによる回答の表示に続いて、質問内容が解決したかのアンケートを表示する。
該当のアンケートにより収集する解決率と質問者が回答を選択するまでの時間などを収集し、AIが学習して回答の精度を上げる仕組みである。
第3章 経営層への提案と評価、改善事項
3-1.経営層への提案と評価
私は経営層への提案において重要と考えたのは、「事業目標達成への寄与」である。AIチャットボットの導入が、「顧客満足度の向上による売上向上」「費用削減による収支の改善」という事業目標にどのように寄与するかについて、放棄呼の削減による顧客満足度の向上と残業時間抑制による費用削減の効果をシミュレーションしてまとめ、AsIs-ToBe分析の形で説明した。
経営層からは、事業目標に合致する事、既存環境を活用した堅実な進め方であることで、概ね前向きな評価をいただいた。
一方で、AIチャットボットが稼働しても、使われなければ事業目標の達成には至らないため、広報についても検討をするよう指摘も受けた。
3-2.改善事項
広報の面についても検討はしていたが、経営層への提案においてそこを盛り込んでいない点は反省点であった。私は改めて事業部門であるヘルプデスクのマネージャーとA社のマーケティング部門と連携し、リリース前の広報とリリース後の利用促進方法について検討を進めた。
今後はリリース後のAIの学習結果を注視し、より良いサービスとなるよう改善を検討する予定である。
ー以上ー
【参考】IPAの採点講評について
IPAが公表している解答・講評も要チェックです。
どのような基準で採点されるか、どのような内容の記述が求められるか、確認してみましょう。
https://www.jitec.ipa.go.jp/1_04hanni_sukiru/mondai_kaitou_2022r04.html#04haru