事業計画書「Ⅱ.事業内容」

本記事では、事業計画書の項目「Ⅱ.事業内容」について解説します。

事業計画書とは?という方は以下の記事からご参照ください。

前の記事はこちら↓

「Ⅱ.事業内容」は、事業計画書のメインとなる項目です。

一気に全部書こうとせず、項目ごとにじっくりと考えて取り組んでみてください。

事業計画書サンプルについて

以下、J-Net21に掲載されている「カフェ事業」の経営計画書サンプルを題材に、それぞれの項目について解説します。

参照元はこちら

ビジョン・目標

※「ビジョン・目標」サンプル

ビジョン

ビジョンは、会社あるいは事業の理念のことです。

その事業を行うことで、どのようなことを達成したいのかを端的に記載します。

目標

目標は、利益に関して具体的な数値目標を記載します。

その際「何となくこれぐらい達成できたら良いな」ではなく、具体的な根拠に基づいた数値である必要があります。

根拠については、別記事予定の「損益計画」で算出するので、その結果を記載すればOKです。

事業コンセプト

※「事業コンセプト」サンプル

事業コンセプトは「誰に・何を・どのように売るか」を端的に説明する項目です。

事業コンセプトがぼやけていると、事業を継続・発展させる方向性が迷走してしまいます。

それぞれの項目について、明確・具体的なイメージをもって言語化する必要があります。

商品・サービスの内容

「何を売るか」の項目です。

特にメインとなる商品について、特徴と強み/ウリを記載します。

ターゲット顧客

「誰に売るか」の項目です。

マーケティングでは「ペルソナ」と言ったりしますが、ターゲットとなる顧客層を明確化しておく必要があります。

ポイントとしては、「ターゲット層の範囲」を適切に設定することです。

例えば、ターゲットとして「20代~60代の女性」だと、範囲が広すぎてコンセプトがぼやけてしまいます。

逆に「20代で未婚、店舗から500m以内居住で彼氏のいる女性」は範囲が狭すぎます。

どういった層をターゲットにするか、によって、販売する商品の種類や価格、販促・集客方法も変わってくるため、ターゲット顧客の設定は非常に重要です。

設定に不安がある場合は、マーケティングの専門家や業界に明るい先輩などに相談してみると良いでしょう。

サービス・商品の提供方法・仕組み

「どのように売るか」の項目です。

事業をスタートし、継続する上で「仕組化」は非常に重要です。

例えば、商品という側面で言うと、仕入→保管→販売、というプロセスが必要です。

また、顧客という側面で言うと、見込み客→新規顧客→リピーター、というプロセスが必要でしょう。

例えば、見込み客は多いが新規顧客が少ない、あるいは新規顧客は多いがリピーターが少ない、などの場合だと、安定した事業運営が難しくなることはお分かりだと思います。

どのようにしてサービスを提供し、安定して顧客を獲得するか、を検討し記載する必要があります。

※書き方の例としては、前述のサンプルをご参照ください

現状分析等

※「現状分析等」サンプル

自社が参入しようとしている業界のトレンドや市場規模、競合の状況、自社の強みなどについて記載します。

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」。
当然ですが、事業を取り巻く環境や自社の強みを把握しておくことにより、事業の成功率はUPします。

また、第三者側(銀行や補助金審査側)としては「本気で事業を成功させようとしているのであれば、当然マーケットについては調べて認識しているよね?」というスタンスでチェックされるので、しっかりと現状を分析した上で事業を展開しようとしていることが分かる書き方になっている必要があります。

業界のトレンド・市場規模

事業の業界のトレンドや市場規模を記載します。

業界のトレンドなどは、業界紙統計資料を調べると良いでしょう。

業種別(建設業、小売業、など)では総務省統計局の経済センサスで調べられるほか、検索エンジンで「カフェ 統計」などで検索すると、色々な統計が出てきます。

競合の状況

競合に関しては、よりミクロな切り口で分析する必要があります。

喫茶店の例で言うと、出店予定地の商圏に競合となる店舗がどれくらいあるのか、商品価格、客層、特徴が自社と競合するのかしないのか、などの調査をして、その結果を記載します。

競合の分析については、「5フォース分析」というフレームワーク(=テンプレートのようなもの)があります。

別記事にて解説しているので、そちらもご参照ください。

自社の強み・優位性

自社の強みや、他社と比較した際の優位性を記載します。

業界のトレンドや競合の状況を踏まえて、「こういった強みがあるので、この事業は成功する!」ということを訴求する項目となります。

※ただアピールするだけではなく、そういった強みが無いと事業を継続することは難しいのが実情です。

また、強みや優位性の書き方のポイントとしては、「定量的な根拠」に基づいて記載することです。

例えば「丈夫なので他人の倍の時間働けます!」ではなく「飲食業界で10年勤務」「珈琲豆の焙煎の大会で優勝」「既存の取引先から優先的に原材料を卸してもらうことができる」などである必要があります。

自社の強みや弱みについては、有名な「SWOT分析」というフレームワークがありますので、こちらもご参照ください。

販売・仕入計画

※販売・仕入計画サンプル

販売計画

「いくら売り上げるか」の計画を記載します。

もっとも単純な計算としては、「商品単価×販売個数」をベースに売上単価を算出し、日毎/月毎/年毎の売上を計画します。

既に仕事で経験のある分野であれば、単価や販売個数、繁閑などによって計画を立てられるでしょう。

もし未経験の分野であれば、Webや業界紙で調べたり、セミナーや経験者にヒアリングするなどして妥当な数値を算出しましょう。

仕入計画

商品あるいは原材料の仕入先を記載します。

近隣のスーパーなどからの仕入であれば問題ありませんが、契約書などを作成して取引契約を結ぶことを想定している場合は、事前に仕入先に問合せて確認しておきましょう。

起業した後に、いざ仕入れしよう! としたタイミングで、取引先の都合で取引できませんでした、となっては、事業展開に支障が出てしまいます。

安定的な仕入れができるか、という点は、事業継続の上でも重要です。

販売促進・集客方法

商品やサービスの販売・集客方法について記載します。

「良いものを作れば売れるはず」「良いサービスを提供していれば、そのうち口コミで広まるはず」と考えているのであれば、危険と言わざるを得ません。

チラシを配るのか、SNSやブログでアピールするのか、看板やのぼりでアピールするのか、などの販売・集客方法を検討・記載します。

補足としては、販売促進については「チラシを何枚配ったから来客数が何%向上」といった見込みが立ちにくい、という特性があります。

そのため、本来計画については極力定量的に計画・効果測定するのが理想ですが、販売促進・集客方法については、「どのような方法で集客するか」という行動を記載すればOKです。

店舗・施設計画

※店舗・施設計画サンプル

店舗、施設計画はリアル店舗を構える場合に記載します。

ネットショップであれば記載不要か「ネットショップのため店舗は設けない」と書いておけば良いですが、一方で飲食店などは店舗の立地が非常に重要となるため、しっかり記載する必要があります。

出店エリアの状況/店舗概要

出店を予定しているエリアの特徴と店舗の概要を記載します。

出店エリアについてあ、こちらも統計情報などを参考にして記載できますが、国の統計情報よりもよりローカルな情報となるので、県や市町村の統計情報を参照すると良いでしょう。

店舗概要については、不動産情報に掲載されている情報(最寄駅から徒歩何分、床面積、席数など)を記載すればOKです。

上記サンプル画像をご参照ください。

実施体制・人員計画

※実施体制・人員計画サンプル

該当の事業について、どのような体制・人員計画で行うかの計画を記載します。

体制については、想定している事業展開と大きく関わる項目となります。

例えば、地元で喫茶店を開業する、ということであれば体制は大きくは変わらないのが妥当ですが、キッチンカー1台で飲食業を始め、3年で15台のフランチャイズ展開を計画している、ということであれば、従業員を増やして対応していかなければいけないでしょう。

特に人件費は収支上大きな影響を与えるので、事業展開・損益計画と整合性のとれた実施体制・人員計画を検討する必要があります。

おわりに

今回は事業計画書のうち、「事業内容」について解説しました。

解説を見ていただいて分かる通り、事業計画書を作成することは事業の継続可能性を高めることに直結します。

単に融資や補助金を受けるために提出する資料、ではなく、なぜ自分は起業しようと思ったのか、何を成そうと思ったのか、などを振り返り、どうやったら事業を成功に持っていけるかに考えを巡らせる良い機会になるはずです。

次回は「数値計画」について解説します!