起業の一形態「共同創業」とは
共同創業とは?
共同創業とは、複数の者が共同で事業を立ち上げ、経営を行うことです。
一人ではなく、複数人で力を合わせ、お互いを補完し合いながら、ビジネスを成長させていくことを目指します。
共同創業のメリット
- 創業の敷居が下がる
「自らは創業向きの性格や思考はなく、創業するつもりも全くなかったが、友人の創業の応援がきっかけで、共同創業に踏み切った」という例もあります。ひとりで創業するよりも、資金や知恵を出し合って創業する方が心強いのは事実でしょう。 - モチベーションの向上
共通の目標に向かって向かう仲間がいるということは、モチベーションを維持し、高い生産性を維持することにつながります。 - 多様なスキルや知見の集結
それぞれの共同創業者に異なるスキルや経験、知識があるため、それらを組み合わせることで、より幅広い事業展開が可能になります。開発のスキル、事業運営のスキル、財務会計のスキルなど、それぞれが得意分野を持ち寄ることで、事業の安定・発展につなげることができます。
共同創業のデメリット
一方で、共同創業にはデメリットの可能性もあります。
- 意見の対立
複数の者が集まるため、意見が対立し、意思決定が遅れることがあります。
また、創業時は同じ志で集まった創業メンバとしても、事業が大きくなるにつれ事業の方向性について意見が分かれる可能性があります。 - 責任の所在が曖昧になる
可能性責任の所在が曖昧になり、トラブル発生時に責任の所在が明確化されない可能性があります。 - 利益配分でのトラブル
「貢献度に見合った利益配分がされていない」など利益の配分方法について意見が対立し、人間関係が悪化する可能性があります。 - 会社の方向性がブレる可能性
それぞれの共同創業者の意見が異なる場合、会社の方向性がブレてしまう可能性があります。
共同創業で起こりやすいトラブル
共同で事業を始める場合、必ずしも全てが順調に進むとは限りません。
共同創業者との間で意見の対立が生じ、最悪の場合、事業そのものが立ち行かなくなるケースも少なくありません。
例えば、あるスタートアップ企業では、共同創業者の2人が、事業の拡大スピードについて意見が対立し、最終的に会社が分裂してしまったというケースがありました。
また、よくあるパターンとして、家族や友人、仲の良い同僚などとの共同創業の場合、価値観や目指す目標について総業者間でズレが出てきたとしても、関係悪化のダメージを恐れてセンシティブな話題を避ける傾向があります。
そのため、問題が大きくなるまで齟齬が表面化せず、大きなトラブルになりがち、という危険性もあります。
トラブルを未然に防ぐための「創業株主間契約書」
共同創業者のトラブルを未然に防ぐためには、事前にしっかりと契約書を作成することが重要です。
そのために、「創業株主間契約書」という契約書があります。
契約書を作成することで、以下のような効果が期待できます。
- 各々の役割分担を明確にする
- 意思決定プロセスを定める
- 利益配分を明確にする
- トラブル発生時の対応策を定める
といった効果が期待できます。
契約書に盛り込むべき内容としては、以下のような項目が挙げられます。
- 役割分担:各創業者の役割分担を具体的に記載する
- 意思決定プロセス:重要な意思決定はどのように行うのかを定める
- 利益配分:利益をどのように配分するのかを定める
- 退社時の取り決め:会社を辞める場合の取り決め(株式の譲渡、秘密保持など)
- 紛争解決方法:トラブルが発生した場合の解決方法(仲裁、調停、訴訟など)
などが挙げられます。
以下に、創業株主間契約書のイメージ例を記載します。
創業株主間契約書(ドラフト例)
第1条 目的
本契約は、[会社名]株式会社(以下「会社」という。)を共同で設立する[各株主の氏名](以下、総称して「株主」という。)が、会社の設立及び経営に関する事項について相互に協力し、会社の健全な発展を図ることを目的とする。
第2条 株式の譲渡制限
- 株主は、自己の保有する会社の株式(以下「自社株」という。)を第三者に譲渡する場合には、事前に他の株主に譲渡の意思表示を行い、他の株主が同数同種の自社株を同等の条件で購入することを優先させるものとする。
- 前項の規定にかかわらず、会社が第三者からの投資を受ける場合など、会社にとって特に有利な条件で株式を譲渡することが必要と認められるときは、この限りでない。
第3条 議決権
- 会社の取締役会及び株主総会における議決権は、各株主が保有する株式の数に応じて行使する。
- [重要事項に関する議決権の行使に関する特約]
第4条 配当
会社の剰余金から配当を行う場合には、各株主が保有する株式の数に応じて均等に行う。
第5条 役員
- 会社の取締役は、株主の中から選任する。
- 取締役の任期、報酬、解任事由などは、定款に定める。
第6条 秘密保持
本契約当事者は,本契約の存在および内容を,厳に秘密として保持し,第三者に対して開示または漏えいしてはならない。
第7条 本契約の終了
1 本契約は,次の場合に終了する。
(1)本契約当事者が本契約の終了を全員一致で合意した場合。
(2)本会社株式が金融商品取引所に上場された場合。
2 本契約の終了は将来に向かってのみその効力を生じ,本契約に別段の定めがある場合を除き,終了前に本契約に基づき発生した権利および義務は終了による影響を受けない。
第8条 権利の譲渡および義務の引受
本契約当事者は,第三者に対し本契約に基づく権利を譲渡しまたは義務を引き受けさせることはできない。
第9条 紛争解決
本契約に関する紛争については、[裁判所]を専属的合意管轄とする。
第10条 その他
- 本契約に定めのない事項については、会社法その他の関係法令の規定に従う。
- 本契約は、[年月日]に作成し、各当事者が署名捺印した上で効力を生ずる。
第11条 契約期間
本契約は、会社が解散するまで効力を有する。
以上、本書2通を作成し、各当事者が各自1通を保有するものとする。
[年月日]
[各株主の署名・捺印]
創業株主間契約書の注意点
上記はあくまでドラフトであり、実際の契約書作成にあたっては、行政書士や弁護士などの専門家にご相談ください。
また、各条項の内容は、会社の状況や株主間の合意内容によって変更する必要があります。
特に、株式の譲渡制限、議決権、競業避止義務、機密保持義務などは、詳細に検討する必要があるほか、定款との整合性にも注意が必要です。
その他、追加で検討すべき条項の例
上記のほか、検討するべき項目としては以下のような項目があります。
- 競業避止義務:会社を退任した場合の競業避止義務
- 機密保持義務:会社の機密情報を保護するための義務
- 株式の買い取り請求権:会社が解散する場合や、特定の事由が生じた場合に、他の株主に自社株の買い取りを請求できる権利
- 損害賠償:契約違反があった場合の損害賠償に関する規定
まとめ:共同創業者とトラブルになった時のために
共同創業者のトラブルは、事業の成功を大きく阻害する可能性があります。
トラブルを未然に防ぐためには、事前にしっかりと契約書を作成すると同時に、日頃から共同創業者同士でコミュニケーションを密にすることが重要です。
万が一、トラブルが発生した場合には、早急に適切な対応を取るようにしましょう。