はじめに
IT担当者がいない中小企業にとって、システムの導入や運用は大きな課題です。
システムを導入したいが、どんなシステムを選べば良いのか分からない、導入後の運用を担当できる人材がいない、など悩みがつきないことでしょう。
本記事では、中小企業の社長やIT推進者向けに、システム導入と運用保守のポイントを解説します。
クラウドサービスの活用|中小企業のための新しい選択肢
近年では、クラウドサービスも一般的となりました。
クラウドサービスとは、インターネット経由でソフトウェアやアプリケーション、データなどを利用できるサービスです。
例えば、Gmailなどのメールサービス、Boxなどのオンラインストレージなどいずれもクラウドサービスです。
クラウドサービスは、初期費用を抑え、柔軟にシステムを利用できるというメリットがあります。
中小企業でこれからシステムやサービスの導入を検討するにあたっては、利用するのはほぼクラウドサービスになるでしょう。
クラウドサービスの種類
- SaaS (Software as a Service) :
特定のソフトウェアをインターネット経由で利用するサービス
※多くのクラウドサービスは、このSaaSに該当する - IaaS (Infrastructure as a Service):
サーバーなどのインフラをインターネット経由で利用するサービス - PaaS (Platform as a Service):
アプリケーション開発に必要なプラットフォームをインターネット経由で利用するサービス
システム導入前の準備|現状分析とニーズの明確化
システム導入を成功させるためには、まず自社の現状を正確に把握することが重要です。
現状の業務フローの可視化
現在の業務を一つ一つ洗い出し、どこに課題があるのかを明確にします。
この業務フローの可視化は非常に重要なポイントです。
例えば業務プロセスが属人化しており、社内で共有できていない、という課題があったとします。
これをナレッジシステムを導入して解決しようとしても、上手くいかない場合が多いでしょう。
この場合、まずは業務フローをExcelでもPowerPointでも良いので、まずは可視化します。
そして、この可視化したタイミングで色々と無駄な工程や、非効率なやり方がわかる場合も多いので、ITに乗せる前にまずはそこを改善できないかを検討します。
そしてスマートなやり方になった段階でシステム導入を図る、というのが効果的な方法です。
必要な機能の洗い出し
課題解決のために、システムにどのような機能が必要なのかを具体的に洗い出します。
前項の業務フローの可視化を行なっていないと、「今はこういう作業をしているから、こういう機能も必要だよね」と機能が膨らみがちになります。
しっかりと業務を精査した上で、必要な機能を洗い出す必要があります。
また、やり方としては洗い出した機能の一覧について優先順位をつけても良いでしょう。
例)機能の判断基準
- 必須:該当機能が無ければ業務目的を達成できない、必須機能
- 希望:別の手段や運用で代替可能な、「あれば良い」機能
予算の決定
システム導入には費用がかかります。
多くの場合は初期費用(イニシャルコスト)と運用費用(ランニングコスト)です。
※SaaSの場合は、イニシャルコストがかからない場合もあります。
運用費用については、システムを導入することでかかる費用のほか、導入することで削減できる費用はないか、といった点も含めて考慮に入れましょう。
予算を事前に決めておくことで、無理のないシステム選定が可能になります。
システム選定のポイント|中小企業に最適なシステムとは?
システムの種類は多種多様ですが、中小企業に最適なシステムを選ぶには、以下のポイントを考慮しましょう。
導入コスト
初期費用だけでなく、ランニングコストも考慮が必要です。
システム製品の料金体系によっては、使用するユーザーが増えると料金の価格帯も変更になる(上がる)場合もありますので、将来的な計画も含めて検討します。
操作性
使いやすいインターフェースであるか、社員がスムーズに操作できるかを確認します。
多くのサービスでは、お試し期間として一定期間無料などのサービスもあるので、実際に触ってもらうことが望ましいでしょう。
本番展開でいきなりシステムを触るよりも、導入の心理的負担の軽減にもなります。
拡張性
将来的に業務が拡大した場合でも、システムが対応できるかを確認しましょう。
ポイントとしては、以下のような点があります。
- 利用料金:
- 利用ユーザーが増えた場合の料金について
- 利用データが増えた場合の料金について
- 他システムとの連携:
他のシステムとの連携が可能であれば、今後の業務効率化の推進に役立つかもしれません。現在使っているシステムや、今後利用可能性があるシステムとの連携の可否についても確認しましょう - バージョンアップ・機能追加について:
特にSaaSサービスなどでは、自動でバージョンアップが適用される場合がほとんどです。
社内で保守が不要な反面、画面の見え方が変わったりなどの影響を受ける可能性もあることを念頭に置いておきましょう。
また、利用候補の機能やプランに加えて、今後追加機能が必要になった場合の料金や方法についても確認が必要です。
サポート体制
導入後のサポート体制が充実しているかを確認することも必要です。
特に、社内のITスキルに応じて必要十分なサポートが得られるか、を確認する必要があります。
例えば、「電話ですぐにサポートを受けられる」というサポート体制の場合もあれば、「Webフォームで問い合わせをして数日以内には返信します」というサポート体制の場合もあります。
自社に必要なサポートレベルかどうか、事前に確認しておきましょう。
システム導入時の注意点|スムーズな移行のために
システム導入は、既存の業務フローを変える大きな作業です。スムーズな移行のためには、以下の点に注意しましょう。
関係者の協力
システム導入は、社員全員の協力が不可欠です。
事前に説明会を開催し、理解を得るようにしましょう。導入推進としては、社長が率先して導入を推進する姿勢を見せることが望ましいと言えます。
具体的には、社長が実際に率先して使ったり、システム導入の必要性を社員に丁寧に説明して、理解と共感を得る必要があります。
場合によっては、何回かに分けて説明会を実施するなど、社内に対してシステム利用に対する意識を浸透させることも有効です。
テスト運用
本稼働前にテスト運用を行い、問題がないかを確認しましょう。
前述のお試し期間でトライアルを行うほか、システムの種類にもよりますが、しばらくは旧運用と並行稼働して、どちらでも対応できる体制にすることも安全性の面からは有効です。
ただし、テスト運用にしても期間を区切って、最終的には新システムに移行する、という取り組みが必要です。
システム運用保守の重要性|安定稼働のための取り組み
システムの導入も一苦労ですが、システムを導入しただけでは終わりではありません。
安定稼働を維持するためには、継続的な運用保守が不可欠です。
システム利用の定着までは体制を維持する
システムを導入して終わり、という訳ではなく、しばらくはシステムの使い方についての問い合わせや、運用方法についてブラッシュアップする必要があります。
例えば以下のような体制を整えておくと良いでしょう
導入プロジェクト体制の維持
導入担当を窓口として、問い合わせを受け付ける体制を維持しておきます。
不明点があれば導入担当へ聞いてもらい、導入担当がソフトウェアのベンダに問い合わせるなどの対応をします
Q&Aの社内共有
問い合わせがあった内容とそれに対する回答をまとめ、社内に共有します。
社内のITスキルの底上げ、システムに対する習熟度の向上、システム利用の浸透度の向上などが期待できます。
定期的な振り返りの実施
月次、四半期、半年など、導入したシステムに対する振り返りを実施します。
どのようなQAがあったか、社内でシステムが使われているか、当初目的としていた効果は出ているか、などです。
システム導入のよくある失敗パターンは、
- システムを導入したは良いけれども、その後段々と使われなくなった
- 運用ルールが徹底されず各自が好きに使ってごちゃごちゃしてしまっている
などが「あるある」なパターンとなります。
定期的な振り返りを行い、運用定着を目指しましょう。
まとめ
システム導入は、中小企業にとって大きな決断です。
社内の人材不足や、導入ノウハウの不足など、課題も少なくはない場合が多いですが、適切な準備と計画のもとに進めることで、業務効率化や生産性向上に繋げることができます。
外部人材やシステムベンダなどを活用し、システムの導入と運用を目指しましょう。
本記事が、システム導入を検討されている方の参考になれば幸いです。