はじめに
市場分析は、事業を成功に導くためにに不可欠なステップです。
市場分析は一般的にマーケティングの分野とされますが、「商品やサービスの現在の買い手と今後開拓すべき未来の買い手を調べる」と理解しておくと良いでしょう。
製品やサービスに対して、すでにニーズや市場がある場合は「既存市場」。
これから新たなニーズを掘り起こしていく場合には「新市場」が舞台となります。
既存市場はニーズが顕在化されており、顧客側もある程度知識があるため、製品・サービスを市場に浸透させる労力がかからない反面、競合も多くなります。
新市場は競合が少ない可能性がある反面、製品・サービスを認知してもらう労力がかかります。
したがって、新規事業となる製品・サービスを市場に投入する際に、どの市場に投入するのかは非常に重要です。
この記事では、市場分析の基本的なフレームワークである「TAM・SAM・SOM」について詳しく説明していきます。
TAM(Total Addressable Market)
TAM(Total Addressable Market)は、「製品やサービスが提供できる市場全体」を指します。
もう少し分かりやすく言うと、製品やサービスが対象とする一番大きな枠組みとなる「最大の市場規模」です。
例えば、事業内容がラーメン屋の経営である場合「飲食業界」をTAMとすることもできます。
TAMは市場や業界といった大きな枠組みで分析するための指標です。
TAMを評価する際に考慮すべきポイントは以下の通りです。
- 市場の成長率
- 顧客のニーズ
- 競合他社の存在と市場シェア
TAMを飲食業界と設定した場合、飲食業自体の市場成長率は上がっているのか下がっているのか。
顧客のニーズとしては外食が増えているのか、テイクアウトが増えているのか、などを分析するための元データとなります。
TAMを設定する際のポイントとしては、必ずしもTAMは一つに絞られるわけではないという点です。
前述の例で言うと、ラーメン屋の経営という事業内容に対して、TAMを「飲食業界」と設定することもできますし、「ラーメン業界」で設定することもできます。
例えば、ラーメン店の経営のほかにラーメンを冷凍自販機で販売することを事業内容として視野に入れていた場合、TAMを「飲食業界」に設定するべきかもしれません。
一方、地域密着のラーメン店の経営を考えているのであれば、TAMを「ラーメン業界」に設定するべきかもしれません。
TAMとして設定した市場規模が大きいほど事業の拡大余地があるということになりますが、大きくなるほど良いというわけではありません。
非現実的な規模で市場を選んでしまうと、大手が既に参入していたり競合が多い市場であったりとレッドオーシャンな市場を選んでしまうこともあるので、自社が参入できる規模かどうかということも考慮して設定する必要があります。
参考:TAMの設定に役立つデータ
総務省統計局-サービス産業動向調査:産業別の売上高などを知ることができます。
SAM(Serviceable Addressable Market)
SAM(Serviceable Addressable Market)は、事業における製品やサービスが実際に提供できる市場の大きさを示します。
TAMと比較して、SAMはより具体的な市場を指します。
ラーメン店の例で言うと、一例としては「出店場所の一次商圏(徒歩15分以内の距離)内におけるラーメン市場のうち、顧客としてアプローチできるターゲット層の総和」と設定することができます。
つまり、一次商圏内にラーメン屋が自店しかなかった場合、総額幾らの売上になるか、が実際に提供できる市場規模となり、SAMとなります。
SAMの評価には、以下の要因を考慮することが重要です。
- 自社の製品やサービスが適しているセグメント
- 自社の資源(リソース)と能力に応じた市場の選定
- セグメントごとの市場規模
SAMの設定方法
SAMの設定においては、ある程度の推定が必要となってきます。
具体的には、下記のような方法で推定します。
- 一次商圏内の人口を調べる(市町村などの統計情報を参考にする)
- 一次商圏内にあるラーメン店の数を調査する
- 「一人当たり週1回程度ラーメン店で食事をする」と仮定する
- 一人当たりの客単価を仮定する
- 上記の条件を掛け合わせて、一次商圏内のラーメン店の市場規模を推定する
補足)
上記のように、実際に調査することが難しいものや特定することができないものなどを理論を用いて推測し、短時間で概算する手法を「フェルミ推定」といいます。
SOM(Serviceable Obtainable Market)
SOM(Serviceable Obtainable Market)は、あなたのビジネスが実際に獲得できる市場の大きさを示します。
SOMで実際に自社がアプローチできる市場規模を算定しましたが、実際は該当の市場の顧客をすべて獲得できるわけではなく、競合が存在します。
そんな競合がいる中で、自社がどれくらいの市場シェアを獲得できるか(あるいは獲得することを目標にするか)がSOMとなります。
そのためSOMはそのまま売り上げ目標とする場合もあります。
SOMもSAMと同じく、フェルミ推定などを用いて現実的に獲得を目指す市場シェアを設定することとなります。
まとめ
TAM、SAM、SOMは、市場分析を行う際に重要なフレームワークです。
これらの概念を正確に理解し評価することで、事業計画はぐっと成功に近づくはずです。
本記事が、事業計画策定のご参考になれば幸いです。