はじめに

「新しい設備を導入したいけれど、資金繰りが…」

「革新的なサービスを開発したいけど、開発費が捻出できない…」

そんな悩みをお持ちの中小企業の経営者は多いのではないでしょうか?

実は、これらの悩みを解決する強力な味方となるのが、「ものづくり補助金」です。

この補助金は、革新的な製品開発生産プロセスの改善に取り組む中小企業・小規模事業者を支援することを目的としています。

本記事では、そんなものづくり補助金について解説していきます。

Nao

2025年の「ものづくり補助金」について、概要、公募要領、そして採択率を上げるための具体的なコツまで、詳細に解説していきます!

1. ものづくり補助金とは?概要と目的、対象者について

ものづくり補助金、正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」と言います。

その名の通り、中小企業・小規模事業者が、製品やサービスの革新的な開発、または生産プロセスやサービス提供方法の改善を行うための設備投資等を支援する補助金です。

この補助金の大きな目的は、日本経済全体の生産性向上を図ることにあります。

単に設備を導入するだけでなく、それによって新たな付加価値を生み出したり、コストを削減したりといった、企業の「稼ぐ力」を向上させることが求められています。

補助金の目的

  • 生産性向上の促進
    新しい技術や設備を導入することで、生産効率を大幅に向上させる。
  • 革新的な製品・サービス開発の支援
    市場にない新しい製品やサービスを生み出すための研究開発や設備投資を後押しする。
  • サプライチェーンの強靭化
    国内のサプライチェーンを強化し、災害や有事にも対応できる体制を構築する。
  • 賃上げへの取り組みの支援
    生産性向上によって生まれた利益を従業員に還元する、積極的な賃上げを促す。

対象となる事業者

この補助金は、以下の要件を満たす中小企業・小規模事業者が対象となります。

  • 資本金の額または出資の総額
    一定の金額以下(例:製造業は3億円以下、サービス業は5,000万円以下、など)
  • 常勤従業員数
    一定の人数以下(例:製造業は300人以下、サービス業は100人以下、など)

※これらの要件は、業種によって細かく規定されています。詳しくは公募要領で要確認。

また、株式会社や合同会社だけではなく、個人事業主や特定非営利活動法人(NPO法人)も、要件を満たせば申請可能な点にも留意しておきましょう。

補助対象となる事業の例

ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者が製品やサービスの革新的な開発、または生産プロセスやサービス提供方法の改善を行うための設備投資等を支援する補助金です。

例えば、以下のような用途で利用することができます。

  • 製造業
    「最新のNC旋盤を導入し、加工時間を短縮する。AIを活用した自動検査装置を導入し、品質管理を高度化する。」
  • サービス業
    「新しい予約システムを開発し、顧客管理を効率化する。ドローンを活用した建物点検サービスを立ち上げる。」
  • 卸売業・小売業
    「POSシステムと連動した在庫管理システムを導入し、発注業務を自動化する。」

これらの例はほんの一部ですが、事業内容が補助金の対象となるかどうかの判断は、事業計画の「革新性」が鍵となります。

逆に、単なる設備の更新や、既存事業の規模拡大だけでは採択されにくい傾向があります。

ものづくり補助金の注意点

ものづくり補助金は、設備投資の「一部」を補助するものです。

全額が補助されるわけではない点には注意が必要です。

また、補助金は後払い(精算払い)が原則です。

採択後、設備を購入し、事業を実施した上で、実績報告を行うことで、補助金が振り込まれます。

そのため、事前に自己資金や借入などで事業費を賄う必要があります。この点を事前に理解しておくことが非常に重要です。

補助金の基本的な知識については、以下の記事もご参照ください。

2. 補助事業のスケジュールと申請から採択までの流れ

ものづくり補助金は、年間を通じて複数回公募が行われます。

各回の公募には、申請受付期間、採択発表日、交付決定日、事業実施期間などが細かく定められています。

直近のスケジュールについて(9/13更新)

直近は「21次締切」の募集が行われています。

公募期間は以下の通りです。

  • 公募開始日:2025年7月25日(金)
  • 申請開始日:2025年10月3日(金)17:00~
  • 申請締切日:2025年10月24日(金)17:00

ここでは、一般的なスケジュールと、申請から採択までの具体的な流れを解説します。

ものづくり補助金の公募スケジュール

公募は、おおよそ3〜4ヶ月に1回のペースで実施されることが多いです。

  • 公募開始
    公募要領が発表され、申請受付が開始されます。この段階で、申請者は事業計画書の作成を開始します。
  • 申請受付締切
    Jグランツ(電子申請システム)での申請が締め切られます。
  • 採択発表
    申請から約2〜3ヶ月後に採択結果が発表されます。この時、申請者は「採択」または「不採択」のいずれかの結果を受け取ります。
  • 交付決定
    採択後、補助事業の具体的な内容を確定させるための手続き(交付申請)を行います。この手続きが完了すると、「交付決定」となり、補助事業の実施が可能となります。
  • 事業実施期間
    交付決定日から一定期間内に、設備の発注・購入、支払いを完了させ、事業を実施します。
  • 実績報告
    事業実施期間が終了後、補助事業に要した経費の支払いを証明する書類(領収書、振込証明書等)を提出します。
  • 補助金交付
    実績報告の内容が審査され、補助金の額が確定した後に、指定の口座に補助金が振り込まれます。

スケジュールの重要ポイント

申請から補助金が振り込まれるまでには、半年から1年近くの期間を要する場合があります。

この期間を見越した資金計画を立てておくことが不可欠です。

申請から採択までの具体的なステップ

STEP1
公募要領の確認

まずは、公募要領を隅々まで読み込み、自社の事業が対象となるか、どのような要件があるかを確認します。

STEP2
事業計画の策定

申請の核心となるのが、この事業計画書です。なぜこの事業を行うのか、どのような効果があるのか、具体的にどう進めるのか、といった点を論理的に記述します。

STEP3
GビズIDの取得

ものづくり補助金の申請は、「Jグランツ」という電子申請システムを通じて行います。Jグランツの利用には、事前に「GビズIDプライム」というIDの取得が必要です。ID取得には2〜3週間かかるため、早めの手続きが推奨されます。

STEP4
必要書類の準備

事業計画書の他に、決算書、履歴事項全部証明書、従業員数の証明書類など、多くの書類を準備する必要があります。

STEP5
Jグランツでの申請

必要な情報をJグランツに入力し、書類をアップロードして申請を完了させます。

STEP6
審査

提出された事業計画書は、外部の審査員によって厳正に審査されます。

STEP7
採択発表

審査の結果、採択か不採択かが発表されます。

ステップの重要ポイント

スケジュールを事前に把握し、計画的に準備を進めることが採択への第一歩です。

特に、GビズIDの取得は時間がかかるため、公募要領の発表を待たずに、興味がある段階で取得しておくことをお勧めします。

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3. 公募要領のポイント解説!知っておくべき重要事項

ものづくり補助金の公募要領は、非常に詳細かつ専門的な内容で記述されています。

しかし、その中には、採択されるための重要なヒントが隠されています。

ここでは、特に押さえておくべきポイントを解説します。

補助金の類型と補助率

ものづくり補助金には、複数の「類型(枠)」が存在します。一般的なものとしては、以下の3つが挙げられます。

  • 製品・サービス高付加価値化枠
    革新的な新製品・新サービス開発※2 の取り組みに必要な設備・システム投資等
  • グローバル枠
    海外事業を実施し、国内の生産性を高める取り組みに必要な設備・システム投資等
  • 特例措置
    • 大幅な賃上げに係る補助上限額引上げの特例
    • 最低賃金引上げに係る補助率引上げの特例

これらの類型によって、補助上限額補助率が異なります。

  • 補助率:
    • 製品・サービス高付加価値化枠、グローバル枠:中小企業1/2、小規模事業者2/3
    • 特例措置:個別に規定

補助対象となる経費と対象外の経費

公募要領には、補助金の対象となる経費が明確に定められています。

一例としては、下記のようなものが対象となります(詳細は公募要領参照)。

  • 対象経費:
    • 機械装置・システム構築費
      設備の購入費、ソフトウェアの購入費、開発委託費など。
    • 技術導入費
      新しい技術を導入するための費用。
    • 知的財産権等関連経費
      特許権等の知的財産権等の取得に要する専門家費用、経費など。
    • クラウドサービス利用費
      クラウドサービスの月額利用料など。
  • 対象外経費:
    • 土地・建物の購入費、賃借料
      不動産に関する費用は原則として対象外です。
    • 人件費
      申請者の従業員の人件費は対象外です。
    • 車両の購入費
      運搬用のトラックなども原則として対象外です。
    • 汎用性の高いもの
      パソコン、プリンター、机、事務用品など、補助事業以外にも使用できるものは対象外です。

補助対象の重要ポイント

対象外の経費を計上してしまうと、申請が不備となり、審査の対象外となるリスクがあります。

購入を検討している設備やサービスが、本当に補助対象経費に該当するかどうかを、公募要領で一つずつ確認することが不可欠です。

4. 採択される事業計画書の書き方!審査員に響く5つのポイント

ものづくり補助金の採択率は、公募回によって変動しますが、概ね30%〜40%程度で推移しています。

決して高いとは言えないこの採択率の中で、いかにして勝ち残るか。その鍵を握るのが、「事業計画書」です。

ここでは、審査員に「この事業は素晴らしい!」と思わせるための、具体的な書き方のコツを解説します。

1. 「なぜ」を明確にする

多くの申請者が陥りがちなのが、「何をやるか」ばかりに焦点を当てることです。

「最新の〇〇機械を導入します」といった記述だけでは、採択には繋がりません。

重要なのは、「なぜ」その機械を導入する必要があるのか、という背景を明確にすることです。

  • 背景:現在の課題、市場の動向、顧客のニーズは何か?
  • 目的:課題を解決し、どのような状態を目指すのか?
  • 必要性:なぜこの補助金が必要なのか?補助金がなければ事業は実現できないのか?

これらの「なぜ」を、説得力のある文章で記述することで、審査員は事業の必要性と重要性を理解できます。

2. 革新性と付加価値を具体的に示す

ものづくり補助金の目的は、「生産性向上」と「革新的な取り組み」です。

単なる設備の老朽化による更新では、高い評価は得られません。

  • 革新性:競合他社にはない、独自の技術やサービス、生産プロセスであること。
  • 付加価値:新たな製品やサービスによって、顧客にどのような価値を提供するのか?
  • 定量的な効果:設備導入によって、生産性が何%向上するか?コストがどれだけ削減できるか?売上がどれだけ増加するか?

「効率がよくなります」「売上が上がります」といった漠然とした表現ではなく、「生産リードタイムを50%短縮し、年間500万円のコスト削減を実現します」のように、具体的な数値で示すことが非常に重要です。

3. 実現可能性と計画の具体性を示す

どんなに素晴らしいアイデアでも、実現できなければ意味がありません。

審査員は、「この事業は本当に実現できるのか?」という視点で事業計画書を読みます。

  • 体制:誰が、どのような役割で事業を推進するのか?
  • スケジュール:各工程をいつまでに完了させるか、マイルストーンを明確にする。
  • 資金計画:自己資金、借入金、補助金の配分を詳細に記載し、資金繰りの見通しを立てる。
  • リスク管理:事業を進める上で想定されるリスク(技術的な問題、市場の変化など)と、その対策を記述する。

この部分をしっかりと書き込むことで、事業計画の説得力信頼性が増します。

4. 収益計画の妥当性を示す

事業が採択された後、補助金が振り込まれて終わりではありません。

事業を通じて収益を上げ、継続的に成長していくことが求められます。

  • 売上計画: 補助事業を通じて、いつ、どれくらいの売上を達成するのか?
  • 利益計画: 増加する売上に対して、コストをどう管理し、利益を確保するのか?
  • 付加価値額の向上: 経費や人件費を差し引いた、企業の「稼ぐ力」を示す指標。この付加価値額が、計画的に増加していくことを示さなければなりません。

審査の重要ポイント

審査員は、この事業が補助金投入に見合うだけの経済的効果を生み出すか、そして持続可能な事業であるかを厳しく評価します。

5. 専門家の活用を検討する

「自分で事業計画書を書くのは難しそう…」と感じた方は、行政書士などの専門家に相談することを検討してみてください。専門家に依頼するメリットとしては、以下のようなものがあります。

  • 客観的な視点
    審査員目線での事業計画の評価や、不足している要素の指摘。
  • 必要書類の準備サポート
    複雑な手続きや書類準備を円滑に進めるためのサポート。

まとめ|ものづくり補助金は「事業計画」がすべて

ものづくり補助金は、単なる資金調達の手段ではありません。

自社の強みを再確認し、将来のビジョンを具体化するための、「事業計画の策定プロセス」そのものです。

この記事で解説したポイントを参考に、ぜひ採択される事業計画書を作成し、未来への一歩を踏み出してください。

もし、申請手続きや事業計画の作成に関してご不明な点があれば、いつでもお気軽にご相談ください。

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参考サイト

ものづくり補助金総合サイト

参考記事

事業計画書を作ろう