補助金の全体像
中小企業庁が運営する、補助金・助成金中小企業支援サイト「ミラサポPLUS」では、補助金とは「国や自治体の政策目標(目指す姿)に合わせて、さまざまな分野で募集されており、事業者の取り組みをサポートするために資金の一部を給付するというものです。」と記載されています。
政府としては、色々な政策目標を掲げているわけですが、その目標を達成するためには、企業や民間団体、個人、自治体などの事業者に取り組んでもらう必要があります。
そのために事業ごとに予算を設けて、事業者の取り組みを支援することで、政策目標を達成しようとしているのです。
その支援策のひとつが「補助金」なのです。
補助金の種類について
広義の補助金としては、「国や地方自治体からの金銭給付」と言うことができます。
ただし、よく耳にする分類として「補助金」と「助成金」がありますが、これらは様々な違いがあるため、混同しないようそれぞれの特徴を覚えておきましょう。
補助金とは?
- 概要:国や地方自治体が法人や個人事業主、創業を検討している個人などを支援するもの
- 目的:新規事業の創出や、新商品・新サービスの開発、経営の安定化などに対する支援
- 所管:(主に)経済産業省
- 特徴:
- 返済義務が無い
- 審査がある(受給できるとは限らない)
- 比較的受給の難易度が高い
助成金とは?
- 概要:雇用関係・研究開発関係における支援を行う
- 目的:事業者の労働環境改善や人材育成を支援
- 所管:(主に)厚生労働省
- 特徴:
- 返済義務が無い
- 審査がない(条件を満たしていれば基本的に受給できる)
- 比較的需給の難易度は低い
よく使われる補助金例
- ものづくり・商業・サービス補助金
中小企業が賃上げや働き方改革といった社会の変化に対応することを支援するための制度。新サービスの開発にかかる費用や、生産性向上のための設備の導入にかかる費用などについての補助を受けられます。
参照:ものづくり補助金総合サイト - 小規模事業者持続化補助金
小規模事業者が自社の経営を見直し、自らが持続的な経営に向けた経営計画を作成した上で行う販路開拓や生産性向上の取組を支援する制度。
参照:小規模事業者持続化補助金 - IT導入補助金
中小企業・小規模事業者の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けたITツール(ソフトウェア、アプリ、サービス等)の導入を支援するための補助金
参照:IT導入補助金 - 事業再構築補助金
新型コロナウイルスによって消費者の需要や売上に変化が生じる中で、中小企業などの事業再構築を目的として創設された補助金。新分野展開、業態転換など、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業の挑戦を支援する補助金。
参照:事業再構築補助金
補助金のメリット・デメリット
補助金のメリット
- 返済不要の資金調達ができる
補助金は融資などと違い、原則返済が不要の資金調達方法です。
例えば起業するにあたり、資本金1,000万円を会社員が貯めようと思ったら大変です。貯蓄に何年もかかり、更にはその間に世の中の情勢は変化し、起業しようと思っていた事業が成り立たなくなってしまうかもしれません。
補助金のハードルは低くはありませんが、事業の大きな助けになることは間違いないでしょう。 - 事業計画の作成を通じて事業の成功率が上がる
補助金を貰うためには、ほとんどの場合、事業計画書の提出を求められます。事業計画書の作成に慣れていないと、その考えることの多さに二の足を踏んでしまう方も多いでしょう。
しかし、補助金のそもそもの目的としては、「事業を成功させたい!」「そのために補助金を活用したい!」という順番であるはずです。
仮に補助金を申請して採択されなかったとしたら、それは事業計画の見通しが甘かったり、第三者に伝わりにくいものであったりなどの理由が考えられます。
その点で補助金の申請(=事業計画の作成)を通じて、結果としては「しっかりした事業計画」と「補助金」の二つの武器が手に入ることとなります。
補助金のデメリット
次に、補助金のデメリット(というか注意点)についてです。
1.審査要件が厳しい
前述の通り、補助金は返済不要の資金のため、欲しいと思う企業はたくさんいます。
かたや、給付する側としては、前述の通り政策を達成するために補助事業をしているわけなので、少しでも成功の可能性が高い(=しっかりした事業計画の)事業に投資したいと考えます。
そのため、さまざまなルールや審査要件が存在し、ライバルも多い場合が多いと言えます。
2.計画通りの事業を行う必要がある
補助金の交付が決定された場合、承認された事業計画書通りの事業を原則行う必要があります。
そのため、「補助金をもらったが、予想外の出費があったのでそちらに補助金を回そう」などと思っても、申請した事業以外に補助金を使うことは認められません。
3.証拠書類の提出が必要
上記の通り、補助金は申請した事業について使う必要があり、その証跡として証拠書類を揃えておく必要があります。
例えば広報費としてチラシの印刷費を補助金で支払う場合、チラシ印刷の見積書、発注書、納品書、請求書、振り込みの控え、チラシの実物の写真および配布先のリストなどが証跡として必要となってきます。
これらを後から集めるのは大変なので、どんな証拠書類が必要かはあらかじめ該当補助金事業の公募要領などでしっかり確認し、事前にそれらを保管しておくよう準備しておく必要があります。
4.補助金を貰った後も書類の提出義務がある場合もある
補助事業の完了(実績)報告書の提出だけでなく、その後の事業化報告書の提出義務がある補助金もあります。
完了(実績)報告書は、補助金額を確定させる報告書になりますので、必ず必要になるものですが、補助金を貰った後も、「ものづくり・商業・サービス補助金」は6年間の事業化報告書の提出が義務付けられている、などの場合もあります。
報告義務を怠ると、次回以降の採択に影響したり補助金の返還を求められたりする場合があります。
補助金の申請~給付までの流れ
補助金の申請から給付までの流れとしては、おおまかには下記のような流れで行われます。
具体的に補助金の利用を考える場合のイメージの参考としてください。
- 事業内容の決定
まずは「やりたい事業」ありきなので、事業内容のアウトラインを描きます - 補助金を探す
次に、事業に合った補助金を探すこととなります。補助金の中には公募期間が短いものもあるため、事業のアウトラインが決まったら早い段階から補助金活用を意識して準備をすすめることが望ましいでしょう。- 補助事業を探す
- 公募期間の確認
- 交付条件の確認
- 事業計画書の作成
補助金の申請には事業計画書が必要になることがほとんどです。 事業の成功率を高めるためにも、事業計画書は作成しましょう。 - 審査の申請
メインの審査を受けるフェーズです。 審査申請から交付決定までは約1か月程度が標準となります。 - 交付手続き
- 事業の開始
- 確定検査
- 事務局が申請内容どおりに補助事業が実施され、経費が適正に支出されたかを確認(チェック)することです。
- 提出された実績報告書の内容を確認し、必要に応じて現地調査・ヒアリングを行います。
- 入金手続き
確定検査により「申請通りの事業が行われて、申請通りの用途で補助金が使われた」ということが確認できれば、晴れて補助金を受け取ることができます。
おわりに
補助金は自社の事業の助けになるばかりではありません。
例えば、中小企業をメインターゲットとしてシステム構築事業を営んでいる場合、構築費用がネックとなって提案が採用されないこともあるでしょう。
その場合、補助金とセットで提案することができれば、他社との差別化にもなるし提案が受け入れられる確率も高まる、というビジネスモデルを描くことも可能となります。
事業計画を考えるにあたって、補助金という選択肢も検討してみていただき、本記事がそのお役に立てれば幸いです。