1.はじめに|IT導入補助金とは

中小企業向けにITシステムを提供する事業者やシステムベンダーの皆さん、日々の営業活動でこんな課題に直面していませんか?

  • 「提案しても、なかなか予算の壁を越えられない…」
  • 「競合他社との差別化が難しい…」
  • 「顧客が本当に求めているものがわからず、提案が空回りしている気がする…」

ITの力を使って業務効率化やDXを、と考える中小企業は多いですが、資金力に限界のある中小企業にとって、システムの導入・運用費用は高いハードルになります。

それら中小企業にシステムやサービスを提案・導入する事業者の皆さまも、冒頭のような課題を抱えがちかと思います。

これらの課題を解決し、営業力を向上させるための強力なツール、それがIT導入補助金です。

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が、生産性向上や経営課題解決のためにITツール(ソフトウェア、サービス等)を導入する際、その経費の一部を補助する国の制度です。

「IT導入補助金」自体については、以下の記事で詳しく解説していますが、本記事ではその中でも特に重要な役割を担う「IT導入支援事業者」に焦点を当ててご紹介します。

IT導入支援事業者として登録することで、競合に一歩差をつけることができるでしょう。

2.IT導入支援事業者に登録されるメリットとは

IT導入支援事業者とは、IT導入補助金を活用して中小企業がITツールを導入する際の支援を行う事業者のことです。

この事業者として登録されることには、単なる補助金申請の代行に留まらない、大きなメリットがあります。

1. 提案の幅が広がり、成約率がアップする

IT導入支援事業者になると、顧客に対して「IT導入補助金を活用して、コストを抑えながらシステム導入しませんか?」という提案が可能になります。

これにより、これまで予算の問題で諦めていた顧客にも、積極的にアプローチできるようになります。

特に中小企業にとって、IT投資は大きな負担となりがちですが、IT導入補助金を活用すれば、導入コストの最大3/4まで補助される可能性があります。

これは、顧客にとって非常に魅力的な提案であり、導入のハードルを大きく下げることができます。

また、IT導入支援事業者は、ただ単に補助金の申請手続きを代行するだけではありません。

顧客の事業課題を深く理解し、最適なITツールを選定し、その導入計画を策定する役割を担います。

これにより、顧客は「自社のことを真剣に考えてくれるパートナーだ」と感じ、信頼関係が深まります。

2. 顧客との関係が強化され、LTV(顧客生涯価値)が向上する

IT導入支援事業者は、IT導入補助金の申請から導入後の効果測定まで、顧客と長期にわたって関わることになります。これは、単なるシステムの売り切りではなく、「顧客の事業成長に貢献するパートナー」としての地位を確立する絶好の機会です。

具体的には、以下のような点で顧客との関係を強化できます。

  • 導入前のヒアリング
    補助金申請に必要な事業計画や経営課題のヒアリングを通じて、顧客のビジネスを深く理解できます。これは、今後の提案やサポートの質を高める上で非常に重要です。
  • 導入後のフォローアップ
    導入したシステムがどれだけ効果を発揮しているか、定期的にヒアリングを行います。
    この過程で、新たな課題やニーズが発見され、追加の提案やアップセル、クロスセルにつながる可能性があります。

このように、IT導入支援事業者として顧客の課題に深く関わることで、信頼関係が築かれ、リピート受注口コミによる新規顧客獲得にもつながります。

結果として、顧客一人あたりの売上(LTV)が向上し、安定した事業運営が可能になります。

3. 自社のブランド価値が高まる

IT導入支援事業者になると、自社が提供するITツールをIT導入補助金の対象ツールとして登録することができます。

これにより、IT導入補助金公式サイトに自社名とサービス名が掲載され、全国の中小企業に自社の存在を知ってもらうことができます。

これは、広告費をかけずに大きなマーケティング効果を得られることを意味します。これまで接点のなかった潜在顧客にもリーチでき、新たなビジネスチャンスが生まれます。

また、IT導入支援事業者は、顧客の補助金申請をサポートすることで、採択率が格段に向上します。

これは、IT導入支援事業者が、補助金の審査基準や採択されやすい事業計画の策定方法を熟知しているためです。

採択率が高いIT導入支援事業者として知られるようになれば、顧客からの引き合いも増え、自社のブランド価値が高まります。

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3.IT導入支援事業者に登録するための要件

IT導入支援事業者になることのメリットは理解できたけれど、実際にどうすればなれるのだろう?

IT導入支援事業者になるための手続きは、一つひとつのステップを丁寧に踏んでいけば、決して難しいものではありません。

1. 登録の要件

IT導入支援事業者に登録するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • ITツールを中小企業等に提供する事業者であること
    自社でITツールを開発・販売している事業者、または他社のITツールを販売している事業者が対象です。
  • IT導入補助金事業の趣旨を理解し、中小企業の生産性向上を目的としたITツールを提供する意思があること
    単なるITツールの販売ではなく、顧客の経営課題解決に貢献する姿勢が求められます。
  • 法令を遵守し、事業遂行能力を有すること
    補助金制度の適正な運用を担うため、コンプライアンス意識と事業遂行能力が求められます。
  • IT導入補助金事務局が実施する研修を受講すること
    補助金の制度や申請手続き、不正防止などに関する知識を深めるための研修です。

2. 登録までの流れ

  1. IT導入支援事業者の募集期間を確認
    IT導入補助金の公式サイトで、IT導入支援事業者の募集期間を確認します。
  2. 申請準備
    会社概要、事業内容、提供するITツール、事業推進体制などをまとめた事業計画書を作成します。
  3. オンラインでの申請
    必要な書類を揃え、IT導入補助金事務局のオンラインシステムを通じて申請します。
  4. 審査
    提出された申請書類は、IT導入補助金事務局による厳正な審査を受けます。
  5. 登録完了
    審査に通過すると、IT導入支援事業者として登録が完了します。

IT導入支援事業者の申請は、一度で必ず採択されるとは限りません。万が一不採択になった場合でも、不採択理由を参考に、事業計画書を修正して再申請することができます。

これらのステップを確実に踏み、事業計画書を練り込むことで、IT導入支援事業者として登録され、新たなビジネスチャンスを掴むことができるでしょう。

参考)IT導入補助金対象ツール

IT導入支援事業者として登録する際、提供するツールは必ずしも自社開発のモノである必要はありません。
以下のような、著名なサービスが登録されているので、自社で取り扱っているサービスか確認しましょう。

IT導入補助金2025対象ツール(ソフトウェア)一覧

4.営業事例|中小企業へのシステム提案は補助金とセットが有効

IT導入支援事業者になった後、どのように営業活動を進めれば良いのでしょうか?

ここでは、IT導入補助金を活用した具体的な営業事例をご紹介します。

営業事例1:予算の壁を乗り越える

【課題】 従業員数10名の中小企業A社は、経理業務を効率化するためにクラウド会計ソフトの導入を検討していました。しかし、「導入費用や月額費用が高く、予算が合わない」という理由で、導入を躊躇していました。

【提案】 IT導入支援事業者であるB社は、A社の担当者に対してIT導入補助金の活用を提案しました。

  • 「IT導入補助金を活用すれば、導入費用と最大2年分の利用料の最大3/4が補助されます」と具体的な補助額を提示。
  • 「通常〇〇万円かかるところが、実質〇〇万円で導入できます」と、補助金活用のメリットを数値で分かりやすく説明。
  • 「申請手続きは当社がサポートしますので、御社は本業に集中していただけます」と、手続きの負担を軽減できることをアピール。

【結果】 A社は、予算の課題がクリアになったことに加え、煩雑な手続きを任せられる安心感から、B社にクラウド会計ソフトの導入を依頼。無事に補助金が採択され、スムーズに導入が完了しました。

営業事例2:競合との差別化を図る

【課題】 中小企業向けに営業支援システム(SFA/CRM)を提案しているC社は、競合他社も同様のサービスを提供しているため、価格競争に陥りがちでした。

【提案】 IT導入支援事業者として登録したC社は、単なるシステムの機能や価格を提案するだけでなく、「IT導入補助金を活用した事業再構築」という切り口で提案を行いました。

  • 「補助金申請に必要な事業計画の策定を支援します」と、顧客の経営課題のヒアリングからサポートを開始。
  • 「単にシステムを導入するだけでなく、御社の業務フローを見直し、生産性向上につながる最適な活用方法を一緒に考えます」と、コンサルティング機能を提供。
  • 「IT導入支援事業者である当社がサポートすることで、補助金の採択率も高まります」と、安心感をアピール。

【結果】 C社は、競合他社との差別化に成功。顧客は、システム導入を通じて自社の経営課題を解決してくれる「信頼できるパートナー」としてC社を評価。価格競争に巻き込まれることなく、高付加価値な提案で成約に繋げることができました。

これらの事例から分かるように、IT導入支援事業者になることは、単なる補助金申請の代行業者になることではありません。

顧客の課題を深く理解し、解決に導くことで、信頼されるパートナーとしての地位を確立し、自社の営業力を根本から強化することに繋がります。

5.おわりに|IT導入支援事業者と行政書士との伴走

「IT導入支援事業者の登録が有効なことは分かったが、補助金のことは知らないし…」と心配される事業者の方もいるかもしれませんが、ご心配なく。

IT導入支援事業者が補助金の申請まですべてを担当する必要はなく、外部の専門家との協力ももちろん可能です。

当行政書士事務所は、法律や制度の専門家として、補助金申請手続きをはじめとする事業者の「面倒くさい」を解決するプロフェッショナルです。

IT導入補助金の申請は、まさにこの「面倒くさい」の典型であり、行政書士が活躍できるフィールドと言えます。

当事務所は、IT法務専門の行政書士として、皆さんとともに中小企業のIT化を支援したいと考えています。IT導入支援事業者である皆さんと当方が連携することで、以下のことが可能になります。

  • 顧客への提案力強化
    皆さんがITツールの専門家として、私が補助金申請手続きの専門家として、顧客にワンストップでサービスを提供することができます。顧客は、ITツール選定から補助金申請、導入後のフォローアップまでを一つの窓口で完結でき、より安心してサービスを利用できます。
  • 事業リスクの低減
    システム開発やITツールの提供には、契約書や利用規約といった法務面の整備が不可欠です。私が皆さんの法務面をサポートすることで、安心して事業を展開していただけます。
  • 新たなビジネスの創出
    IT導入支援事業者の登録代行や、IT事業者向けの法務コンサルティングなど、皆さんの事業拡大に貢献できる新たなサービスを提供できます。

ITシステムを提供する事業者の皆さまは、IT導入補助金の「IT導入支援事業者」として、中小企業のIT化を支援し、自社の営業力も強化していく。

そして、その過程で生まれる法務面の課題を当事務所がサポートする、といったスキームが可能です。

IT導入補助金、IT導入支援事業者に興味のある事業者様は、是非一度ご相談ください。

Nao

一緒に中小企業支援を盛り上げていきましょう!

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