はじめに
特に変化のスピードが激しい現代において、「事業を成長させたい」という経営者にぜひ知っていただきたいのが「経営革新計画」です。
経営革新計画は会社の事業計画、特に「現状維持ではなく、今後もっと事業を成長させたい」という会社にとって必須となる計画です。
この計画の承認を受けることで、補助金の採択率が大幅に向上するだけでなく、低金利融資や税制優遇など、さまざまなメリットを享受できます。
さらに、計画策定のプロセス自体が、自社の経営を見つめ直し、将来の方向性を明確にする絶好の機会となります。
本記事では、行政書士の視点から、経営革新計画の全体像を詳しく解説していきます。
1. 経営革新計画とは?制度の全体像
経営革新計画の基本概念
経営革新計画とは、中小企業等経営強化法に基づき、中小企業が新事業活動に取り組み、経営の相当程度の向上を図ることを目的とした3~5年間の中期計画です。
都道府県知事(または国)の承認を受けることで、さまざまな支援措置を受けられる公的な制度となっています。
この制度の特徴は、「新しい取り組み」と「数値目標の達成」の両方を求められる点です。承認を受けた企業は、国や都道府県から「経営革新に取り組む意欲的な企業」として認められ、これが様々な支援策へとつながります。
対象となる「新事業活動」
経営革新計画で求められる「新事業活動」には、以下の4類型があります。
- 新商品の開発または生産
既存商品とは異なる新たな商品を開発・生産する活動です。自社にとって新しければ対象となります。例えば、和菓子製造業者が地域特産品を使った洋菓子を開発するケースなどです。 - 新役務(サービス)の開発または提供
新しいサービスを開発し提供する活動です。対面型語学教室がオンライン学習システムとAIを活用した個別最適化学習サービスを開始する、などが該当します。 - 商品の新たな生産または販売方式の導入
既存商品の生産方法や販売方法を大きく変革する活動です。店舗販売のみだった飲食店が、冷凍技術を活用した通販事業で全国展開を図るといったケースです。 - 役務の新たな提供方式の導入
サービスの提供方法を革新する活動です。訪問型介護事業者がIoT機器とリモート技術を活用した遠隔見守りサービスを導入する、などが該当します。
重要なのは、「自社にとって新しい」ことです。業界内で既に一般的になっている取り組みでも、自社が初めて取り組むなら対象となり得ます。
数値目標要件
計画では、以下のいずれかの数値目標達成が求められます。
- 付加価値額または1人当たりの付加価値額の伸び率
- 計画期間3年:9%以上(年率3%以上)
- 計画期間4年:12%以上(年率3%以上)
- 計画期間5年:15%以上(年率3%以上)
※付加価値額=企業が生み出した経済的価値を表す指標。「営業利益+人件費+減価償却費」で計算する。
- 経常利益の伸び率(付加価値額の目標に代えて選択可能)
同様に計画期間に応じて9%~15%以上の伸び率が必要です。
承認を受けるメリット
経営革新計画を策定し承認を受けると、以下のようなメリットがあります。
- 補助金採択率の向上
ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金など、多くの補助金で加点評価を受けられます。経営革新計画承認企業の採択率は、未承認企業と比較して明らかに高い傾向にあります。
※加点評価となるかは公募時期により変動する可能性があります。 - 低利融資制度の利用
日本政策金融公庫の「新事業活動促進資金」や商工中金の低利融資制度を利用でき、資金調達コストを抑えられます。 - 信用保証の特例
信用保証協会の保証限度額の別枠化や、保証料率の軽減措置を受けられます。 - 税制優遇措置
特許権等の取得費用の税額控除や、試験研究費の税額控除の特例などがあります。 - 企業の信用力向上
公的機関からの承認は、取引先や金融機関への信用力向上につながります。 - 経営の見える化
計画策定のプロセスで、自社の強み・弱み、市場環境、競合状況を客観的に分析でき、経営の羅針盤を手に入れられます。
2. 経営革新計画の申請の流れ
- 自社分析と市場調査
- 新事業活動の具体化
- 財務データの準備
- 計画書の主要項目の整理
- 新事業活動の内容(最重要)
都道府県の担当窓口や認定支援機関(税理士、行政書士、中小企業診断士など)に相談することで、承認率が大幅に向上します。新規性の充足、数値目標の妥当性、記載内容の不備などについてアドバイスを受けられます。
本社所在地の都道府県に申請します(一部は国)。申請から承認まで概ね2~3ヶ月かかるため、補助金申請予定がある場合は逆算してタイミングを決めます。
追加資料の提出や内容修正を求められることがあります。速やかかつ丁寧に対応することが重要です。
承認後は計画を着実に実行し、毎年度終了後に実績報告書を提出します。この報告は進捗確認と次年度の見直しの機会となります。
3. 申請に必要な書類
必須書類
- 経営革新計画承認申請書
都道府県指定様式に従い、事業内容、新事業活動、数値目標、実施体制、資金計画を記載します。 - 商業登記簿謄本
発行から3ヶ月以内のもの。個人事業主は確定申告書の控えや開業届で代替します。 - 直近3期分の決算書
貸借対照表と損益計算書が必須。財務体質、収益性、成長性が審査されます。創業間もない場合は現時点で可能な期数分を提出します。 - 会社案内(任意だが推奨)
事業内容や製品・サービスを説明する資料。簡単な自社作成資料でも構いません。 - 事業実施に関する補足資料(任意)
市場調査データ、顧客アンケート結果、取引先との覚書など、実現可能性を裏付ける資料があれば添付します。
書類準備のポイント
- 決算書の分析:付加価値額の計算方法を理解し、直近3期分のデータから基準値を正確に算出します。
- 数値の整合性確認:申請書、決算書、補足資料すべてで数値が一致していることを確認します。
- 早めの準備:登記簿謄本の取得や決算書の整理には時間がかかります。余裕を持って準備しましょう。
まとめ
経営革新計画は、単なる補助金獲得のツールではなく、自社の将来をデザインし、具体的な成長戦略を描くための強力なフレームワークです。
計画策定のプロセスを通じて、自社の強みを再認識し、市場機会を発見し、実現可能な成長シナリオを構築できます。
そして承認を受けることで、補助金、融資、税制優遇といった具体的な支援を受けながら、その計画を実行に移すことができるのです。
重要なのは、事業規模ではなく、新しいことに挑戦する意欲と、実現可能な計画です。
当事務所では、お客様の事業成長を真剣にサポートいたします。経営革新計画に興味をお持ちの方、補助金活用をお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。
お客様の会社の将来を、一緒にデザインしましょう。
