はじめに
日本の会社のうち、一番多いのは株式会社であり全体の97%を占めます。
これから起業しようとされる方も、今は株式会社に勤めているという場合が多いかと思います。
しかし、自分がいざ起業して株式会社を設立しようとした場合、どんな組織体(=株式会社の「機関」といいます)にすれば良いか、という点については、意外と知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、株式会社の機関について解説します。
意外と知らなかったり、あるいは分かりにくい点もありますので、基本的なことや中小企業でよく見られる構成などをわかりやすく解説していきます。
株式会社の機関とは?
株式会社の機関とは、会社を運営するための組織のことです。
会社法で定められた機関と、会社が任意で設置する機関があります。
会社法で定められた機関
- 株主総会
会社の最高意思決定機関です。
会社の株式を持った、「株主」が参加できます。
経営陣が事業計画や財務状況などの報告を行い、株主は質問や意見を述べることができます。
また、株主総会では、役員の選解任や定款の変更、会社の解散など、会社の基本的な方針に関する事項を決定します。
通常、1年に1回開催されます。 - 取締役
会社を代表し、業務執行を行います。いわゆる「社長」です。
取締役は複数選任することができ、よくあるのは「専務取締役」「常務取締役」などです。
この場合、「代表取締役」=社長、となります。
取締役が1人の場合は、イコール代表取締役であり、社長となります。 - 監査役
会社の業務執行の適法性などを監査します。
株主総会で選任される役員で、取締役や会計参与の業務を監査する役割を担います
会社が任意で設置する機関
会社法で定められた機関のほか、任意で下記のような機関を設置する場合もあります。
起業したてで会社の規模が小さいうちは、あまり気にしなくても大丈夫です。
- 取締役会
取締役が共同して会社経営に関する事項を決定します。
取締役会の設置には、取締役会が3人以上必要です。
また、通常の会社の会議などとは異なり、3カ月に1回の開催義務や定足数(決められた人数の参加が必要)など、厳格にルールが定められています。
取締役会では、以下のような内容を決議することができます。- 重要な財産の処分や譲受
- 多額の借財(借金や融資)
- 監査役会
監査役が共同して監査業務を行います。
監査役が定期的に集まり、監査結果を報告したり、監査計画を策定したりします。 - 会計監査人
会社の会計に関する事項を監査します。
会社の会計帳簿や財務諸表が適正に作成されているかを監査します。 - 委員会
指名委員会、監査委員会など、様々な種類の委員会が設置されることがあります。
中小企業の機関構成
中小企業では、すべての機関を設置する必要はありません。
一般的には、以下の様な構成が多くなっています。
- 株主総会+取締役会+監査役
- 株主総会 +取締役+監査役
特に、これから起業しようとする場合は小規模な人数で始める場合がほとんどでしょう。
また、株式についても、一旦は創業者メンバーで保有する場合が大半だと思いますので、そうすると最小構成としては「株主総会+取締役」の構成となります。
ただし、ここで注意が必要なポイントとしては、取締役会を設置しない場合、重要な決議事項は株主総会にて決議する必要がある、ということです。
そのため、意思決定のスピードが遅くなるデメリットも考えられます。
※取締役会非設置会社でも、取締役が複数人いる場合は、取締役の過半数による決議も可能。
また、監査役の設置については、「組織のトラブルや不祥事の予防に役立つ」「金融機関からの信用が高まる」「投資家や株主の信頼を得やすい」といったメリットがあります。
機関設計のポイント
機関設計は、会社の規模や業種、将来の成長計画などによって異なります。
- 会社の規模
大企業では、様々な委員会を設置して業務を分担することが一般的です。
中小企業では、シンプルに構成することが多いです。 - 将来の成長計画
将来的に株式公開を検討している場合は、より厳格なガバナンス体制が求められます。
機関設計の注意点
機関設計は、会社設立後にも変更することができますが、変更手続きには一定の手続きが必要になります。
機関設計を変更するには、株主総会で特別決議を行い、定款を変更する必要があります。
また、変更登記申請も必要です。
そのため、設立前に慎重に検討することが重要です。
まとめ
株式会社の機関について、基本的なことや、中小企業でよく見られる構成などを解説しました。
機関設計は、会社の将来を左右する重要な要素です。
この記事が、あなたの会社設立の参考になれば幸いです。