はじめに:飲食店起業における風営法の重要性
飲食店を開業する際、食品衛生法や消防法など、様々な法律を遵守する必要がありますが、その中でも特に重要なのが「風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律」、通称「風営法」です。
風営法は、飲食店を含む風俗営業に関する規制を定めており、違反すると営業停止や罰則を受ける可能性があります。
特に、深夜営業を行う飲食店や、接待を伴う飲食店は、風営法の規制対象となる可能性が高く、事前にしっかりと内容を理解しておく必要があります。
この記事では、飲食店起業を考えている皆様に向けて、風営法の概要や詳細、飲食店との関わりについて、具体例や数値などを交えながら詳しく解説していきます。
風営法とは:概要と目的
風営法は、風俗営業の健全な発展と、国民の生活環境の維持を目的として制定された法律です。
風俗営業とは、主に性風俗関連の営業や、射幸心をそそる遊技を提供する営業などを指しますが、飲食店もその一部に含まれます。
風営法では、風俗営業の種類や規制内容、許可要件などが細かく定められており、飲食店もこれらの規制を受ける場合があります。
以下では、具体的にどのような業態の飲食店が風営法の規制を受けるのか、どのような手続きが必要か、などについて詳しく解説していきます。
飲食店と風営法の関わり:業種と規制内容
飲食店と風営法の関わりは、主に以下の3つの点に集約されます。
深夜酒類提供飲食店営業
深夜0時から午前6時までの深夜時簡帯に酒類を提供する飲食店は、風営法上の「深夜酒類提供飲食店営業」に該当し、警察署への届出が必要です。
- バー: カウンター越しにお酒を提供するバー
- ダイニングバー: 食事も提供するバー
- ショットバー: ウイスキーやカクテルを専門とするバー
- クラブ: ダンスフロアがあり、音楽とお酒を楽しむクラブ
- ライブハウス: 音楽演奏を主体とする飲食店
- 居酒屋: 酒類と食事を提供する飲食店(深夜営業の場合)
ただし、ラーメン店、牛丼屋、レストランなど、主にお酒を提供することを目的としない業態であれば申請は不要です。
特定遊興飲食店営業/接待飲食店営業
客に遊興(ダンス、カラオケなど)をさせたり、接待をする飲食店は、風営法上の「特定遊興飲食店営業」に該当し、都道府県公安委員会の許可が必要です。
- キャバクラ: ホステスが客席で接待する飲食店
- ホストクラブ: ホストが客席で接待する飲食店
- スナック: カラオケなどを楽しむ飲食店
- ショーパブ: ダンスや歌などのショーを提供する飲食店
上記のほかにも、ガールズバーやスナック、ダーツバー、メイドカフェ&バーなども該当します。
これらについては、「接待」が行われるかどうか、が重要な基準となっており、「接待」とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義されています。
(『風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準』)
これらの業種に該当する飲食店は、風営法に基づき、様々な規制を受けることになります。
※一方で、「うちではキャストとお客さんが世間話をするぐらいだから、接待には当たらないよね」など、自社に都合の良い判断をするのは危険ですので、専門家へ相談することをおススメします。
深夜酒類提供飲食店営業の届出の手続きについて
特に一般的な「深夜酒類提供飲食店営業」について解説します。
神奈川県警察のウェブサイトには、深夜酒類提供飲食店営業に関する情報が掲載されています。
- 深夜酒類提供飲食店営業開始届出書
深夜酒類提供飲食店営業を開始する際に必要な届出書です。
神奈川県警察のウェブサイトからダウンロードできます。 - 添付書類
届出書には、以下の書類を添付する必要があります。- 営業の方法を記載した書類
- 営業所の平面図、求積図、照明・音響設備配置図、求積表
- 飲食店営業許可証の写し
- 申請人(法人の場合は役員全員)の本籍記載の住民票の写し
- 用途地域証明書
- 営業所案内図
- 定款(申請人が法人の場合)
- 手続きの流れ:
- 事前相談
管轄の警察署生活安全課に事前相談を行い、必要書類や手続きについて確認します。 - 届出書の作成
神奈川県警察のウェブサイトから届出書をダウンロードし、必要事項を記入します。 - 添付書類の準備
上記に記載された添付書類を準備します。 - 届出
管轄の警察署生活安全課に届出書と添付書類を提出します。 - 審査
警察署で審査が行われます。 - 営業開始
届出受理後、営業を開始することができます。
- 事前相談
詳細については、神奈川県警察のウェブサイトをご確認ください。
神奈川県警察| https://www.police.pref.kanagawa.jp/
風営法違反のリスク:罰則と対策
風営法に違反すると、営業停止処分や罰金などの罰則を受ける可能性があります。
また、社会的な信用を失い、経営に大きな影響を与えることもあります。
風営法違反を避けるためには、事前に法律の内容をしっかりと理解し、必要な手続きを行うことが重要です。
具体的には、以下の点に注意する必要があります。
- 自分の飲食店がどの業種に該当するのかを確認する
- 必要な許可や届出を行う
- 風営法の規制内容を遵守する
まとめ:風営法を正しく理解し、安全な飲食店経営を
風営法は、飲食店経営者にとって非常に重要な法律です。
事前にしっかりと内容を理解し、必要な手続きを行うことで、安全かつ安心して飲食店を経営することができます。
この記事が、飲食店起業を考えている皆様にとって、風営法に関する理解を深める一助となれば幸いです。
補足:風俗と性風俗の違い
風営法上の「風俗営業」は、以下のように分類されます。
- 接待飲食店営業: キャバクラ、ホストクラブなど
- 特定遊興飲食店営業: ダンスホール、ライブハウスなど
- 深夜酒類提供飲食店営業: バー、スナックなど
- 性風俗関連特殊営業: 性的サービスを提供する店舗
上記のうち、1〜3.が一般的に「風俗営業」と呼ばれます。
4.の「性風俗関連特殊営業」は、性的なサービスを提供する営業であり、一般的に「性風俗」と呼ばれるものに該当します。
一般的に「性風俗」と呼ばれるものは、風営法上の「性風俗関連特殊営業」に該当します。
具体的には、ソープランド、ファッションヘルス、アダルトショップなどが挙げられます。
風営法上の「風俗営業」と「性風俗」の違いは、主に以下の点にあります。
- 規制内容
風俗営業は、営業時間や客席の配置、従業員の服装など、様々な規制を受けます。
性風俗関連特殊営業は、より厳格な規制を受けます。 - 許可・届出
風俗営業を行うには、都道府県公安委員会の許可が必要です。
性風俗関連特殊営業は、都道府県公安委員会への届出が必要です。
このように、風営法が規制対象とする「風俗営業」と、一般的に「性風俗」と呼ばれるものは、法律上の区分が異なります。
飲食店を含む風俗営業は、風営法の規制を受ける可能性があるため、事前にしっかりと内容を理解しておく必要があります。
深夜酒類提供飲食店営業に関するご相談はこちら
