はじめに:シェアキッチンとは?

近年、飲食業界で注目を集めている「シェアキッチン」

既存の飲食店の空き時間を活用し、低コストで自分の店を開業できることから、起業を目指す人にとって魅力的な選択肢となっています。

しかし、シェアキッチンで成功するためには、事前に知っておくべき注意点が数多く存在します。

本記事では、シェアキッチンの定義、概要、最近のトレンドについて解説するとともに、開業に伴う手続きや法規制について詳しく解説していきます。

これからシェアキッチンで開業を目指している方は、ぜひ参考にしてください。

シェアキッチンの定義と概要

シェアキッチンとは、既存の飲食店の厨房や客席を時間単位で借りて、自分のメニューを提供するビジネスモデルです。

キッチンカーやフードトラックと異なり、固定の店舗で営業できるため、顧客に安定したサービスを提供することができます。

シェアキッチンのメリット

  • 低コストで開業できる
    店舗の初期費用や家賃を抑えられるため、少額の資金で開業できます。 例えば、飲食店を開業しようとした場合、開業資金の内訳の例としては以下のような費用が掛かります。
    このうち、シェアキッチンでは物件取得費・内装費・厨房設備費などのイニシャルコストがかからないため、大幅にコストを節約することができます。
    • 物件取得費:保証金、礼金、仲介手数料、前家賃
    • 内装費:内装工事費、インテリア費、照明器具費など
    • 厨房設備費:厨房機器、調理器具、食器など
    • 運転資金:人件費、食材費、広告宣伝費、家賃など
  • 短期間で開業できる
    店舗の改装や内装工事を行う必要がないため、スピーディーに開業できます。
  • リスクを低減できる
    長期的な賃貸契約を結ぶ必要がないため、万が一失敗したとしてもリスクを抑えることができます。

シェアキッチンのデメリット

  • 自由度が低い
    既存の店舗の設備やルールに従う必要があるため、自由な店舗運営は難しい場合があります。
  • 競合が多い
    明確な統計はありませんが、シェアキッチンの数は増加傾向にあると言われています。
    その一因として、2020年頃から始まったコロナ禍です。 多くの飲食店が、これまで通りの営業形態を維持できなくなったことに伴い、シェアキッチンやデリバリー専門のクラウドキッチンといった形態が増えてきました。
    コロナ禍が収束した後も、前述のようなメリットを活かしてシェアキッチンが市民権を得てきている、といえます。
  • 衛生管理が重要
    共用の厨房を使用するため、衛生管理には十分な注意が必要です。
    後述しますが、万が一食中毒などが発生してしまった場合に備えて、シェアキッチンの運営側と責任分界点についても明確にしておく必要があります。
    キッチンを「借りる」とはいえ、通常の店舗を持つのと同様の(あるいはそれ以上の)衛生管理が必要となってくる、という点は十分に理解しておく必要があります。

シェアキッチンの最近のトレンド

シェアキッチンは、近年ますます注目を集めており、以下のトレンドが見られます。

  • 多様な業態の増加
    従来の飲食店だけでなく、カフェ、バー、スイーツ店など、多様な業態のシェアキッチンが登場しています。
  • オンラインプラットフォームの活用
    シェアキッチンのマッチングを支援するオンラインプラットフォームが普及しています。
    例)神奈川県のシェアキッチン紹介サイト
  • クラウドキッチンとの連携
    対面で飲食を提供する一般的なレストランと違い、デリバリー専門のキッチンをクラウドキッチン、あるいはゴーストキッチンと呼びます。
    シェアキッチンとクラウドキッチンで連携し、新たなビジネスモデルを構築する動きも活発です。

シェアキッチン開業の手続きと法規制

シェアキッチンを開業するための手続きは、通常の飲食店を開業する場合とほとんど変わりません。

飲食店開業に必要な手続き・許認可については以下の記事をご参照ください。

シェアキッチン開業における注意点・ポイント

食品衛生の責任者は誰になるのか

通常の飲食店を経営する場合、飲食店営業許可を取得し、衛生安全責任者を配置する必要があります。

一方で、食品衛生法は複数人が設備を共有・利用するシェアキッチンのような形態は想定していません。

そのため、「その設備から食中毒が出た場合、誰が責任を取るのか」は非常に重要な論点となります。

主に考えられる責任分界点としては、以下のような可能性があります。

  • 設備の管理者である、シェアキッチンの経営者が責任を取るべき
  • 実際の作り手である、シェアキッチンの利用者が責任を取るべき

現行の食品衛生法は「設備」に対する要件が主となっているので、シェアキッチンの中には飲食店営業許可を取得していたり、衛生安全責任者を配置している、というシェアキッチンもあります。

いずれにせよ、候補となる店舗を検討する際には規約がどうなっているかをよく確認する必要があると言えるでしょう。

シェアキッチンに向いているのはこんな人

1. 低コストで開業したい人

  • 物件取得費を抑えたい
    通常の店舗物件を借りる場合、保証金や礼金、仲介手数料、前家賃など、多額の費用がかかります。
    一例として、飲食店を開業しようとすると、小規模な飲食店でも1千万円はかかるといわれています。
    またその費用をすべて自己資金で賄うという場合はまれで、多くは銀行などに融資してもらったりしますが、やはりお金を借りるということに抵抗感をもつ人もいるでしょう。
    シェアキッチンなら、これらの費用を大幅に削減できます。
  • 内装費・厨房設備費を抑えたい
    シェアキッチンには、調理に必要な設備が揃っていることが多く、内装工事や厨房機器の購入費用を抑えることができます。
    物件取得費に加え、内装費・設備費も多額の資金が必要になる項目なので、その費用が抑えられるのは開業のハードルを下げることに繋がります。

2. 小規模で始めたい人

  • テストマーケティング
    シェアキッチンは、マーケティングとしても有用です。
    まずは小規模で営業し、顧客の反応や売れ行きを確かめたい場合に適しています。
  • リスク軽減
    最初から大きな店舗を構えるよりも、リスクを抑えて飲食店経営を始めたい人に最適です。
    特に飲食業が未経験であったり、オペレーションについて不安がある人は、「お試し」としてシェアキッチンを利用するのも良いでしょう。

3. 複数の事業者に触れたい人

  • 情報交換
    他の利用者と情報交換や交流をすることで、新しいアイデアやヒントを得られる可能性があります。
  • 協力体制
    場合によっては、他の利用者と協力してイベントを開催したり、共同でメニュー開発をしたりすることも可能です。

いずれも、飲食業の経験が少なかったり、一人で始めるのには不安がある人にとっては魅力を感じるのではないでしょうか。

また、シェアキッチンの運営者の中には、利用者にアドバイスをしたり運営をサポートしてくれたりする運営もあります。

どのようなサービスを提供しているか、について選択の基準としても良いでしょう。

4. 時間や場所に制約がある人

  • 副業
    本業を持ちながら、週末だけ飲食店を経営したい場合にもシェアキッチンは向いています。
  • 短時間営業
    短時間だけ営業したい場合や、特定の曜日だけ営業したい場合にも適しています。
    通常の店舗の賃貸では、営業していない日時についても賃料は発生しているわけなので、短時間・特定の曜日だけ営業したいときにシェアキッチンを利用するのは、コストパフォーマンスよく経営することができます。

まとめ

シェアキッチンは、低コストで開業できる魅力的なビジネスモデルですが、成功するのは簡単ではありません。

通常の店舗営業以上に、事業計画を綿密に立てて、自分の強みやウリを明確にする必要があります。

本記事が、シェアキッチン検討のお役に立てれば幸いです。

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