キッチンカーを取り巻く現状
キッチンカーは増加傾向
近年では、大型ショッピングセンターやオフィスビルの駐車場などでキッチンカーを見かけることも一般的になってきました。
特に、2020 年初頭から世界的パンデミックとなった新型コロナの影響で、飲食店店舗をテイクアウト型に変更する等の事業再構築をして、生き残りを図る企業も多くみられました。
そのような中、低コストでテイクアウト専門の移動型店舗で飲食業を始められるキッチンカーに大きな注目が集まっています。
キッチンカーの市場規模は年々高まり、東京都における移動販売車の営業許可件数の推移で見ると、平成元年には415台だったのが平成29年には3,397台と約8倍にまで増加しています。
キッチンカーは店舗を構える飲食店に比べ、比較的少ない資金で開業できるため、店舗での飲食店開業前のステップアップとしてキッチンカーから始めるパターンも見られます。
また、コロナ禍にあってはテイクアウトのニーズを掴み、ウィズ(アフター)コロナにあってはイベントや地域のマルシェなどの出店ニーズが回復し、地域活性化に貢献するなど、キッチンカーの活躍する場面は増えてきている、と言えます。
キッチンカー開業までの流れ
キッチンカー開業までの手続きとしては、大きく2つの手続きが必要です。
それは「飲食業としての準備」と「車両の準備」とになります。
それぞれ、以下で詳しく解説していきます。
飲食業としての準備(営業許可ほか)
キッチンカーで飲食物を提供するにあたり、基本となるのは「営業許可申請」です。
営業許可申請とは、飲食業などを開業するにあたって、保健所に対して行わなければならない申請手続きのことを指します。
キッチンカーという形態であっても、飲食物を提供する以上、一定以上の衛生管理が必要となり、その基準を満たすことができる、ということを証明するための申請と言えます。
営業許可申請について
営業許可には種類があり、販売しようとする商品により細かく区分が分かれています。
一例で言うと、下記のような業種に区分されます。
- 飲食店営業
- 調理の機能を有する自動販売機営業
- 食肉販売業
- 魚介類販売業
- 魚介類競り売り営業
- 集乳業
- 乳処理業
- 特別牛乳搾取処理業
- 食肉処理業
- 菓子製造業
- アイスクリーム類製造業 etc
一般的にキッチンカーで扱うような商品であれば、「飲食店営業」に該当する場合が大半ですが、間違いが無いよう保健所に確認することをおススメします。
【参考】神奈川県の営業許可申請書
【e-kanagawa電子申請】申請書ダウンロード:申請書ダウンロード詳細
食品衛生責任者の資格取得
飲食業許可の対象となる事業を営む場合は、施設につき「食品衛生責任者」を設置する必要があります。
食品衛生責任者の資格は講習により取得することができますので、余裕をもって取得しておきましょう。
【参考】神奈川県の場合
食品衛生責任者を設置してください! – 神奈川県ホームページ (pref.kanagawa.jp)
保健所への事前相談
後述しますが、キッチンカーの設備要件はかなり複雑です。
車両や開業を検討する前、なるべく早い段階で所管の保健所に相談するのがおすすめです。
車両の準備(キッチンカーの選定と購入)
キッチンカーといえば、車両が無いと始まりません。
ここでは、キッチンカーの車両の取得方法と注意点について紹介します。
キッチンカーの選定と購入
キッチンカーの車両の取得方法としては、以下のような方法があります。
- 車両の購入から改装まですべて自分で実施
- 車両の購入は自分で行い、改装部分をキッチンカーの製作事業者へ依頼
- 車両の購入から改装まですべてキッチンカーの製作事業者へ依頼
- 改装済みのキッチンカーをレンタル
- 中古キッチンカーを購入
どの方法を選ぶかは、販売する商品や自身のこだわり、状況(自身に車両に関する知識や技術があるor全くない、など)に左右されるため、自分の事業構想にあった調達方法を検討しましょう。
ポイントは実績とアフターフォロー
とはいえ、多くの人は車両に関する知識は少なく、専門の業者に相談することとなるかと思います。
そこで、キッチンカーの車両取得の注意点を記載しておきます。
【ポイント】設備要件に合った設備が必要
キッチンカーにおいては、主に以下のような設備が必要となってきます。
- 冷蔵設備
生鮮食品などを扱う場合は冷蔵設備が必要になる。食材や仕込み済み製品を保管する量に合わせて必要な容量の設備を準備する。 - シンク・蛇口
シンクは食品等を洗浄するための洗浄設備と従事者の手洗い用の手洗設備の2つが必要となる。 - タンク
給水用、排水用のタンクが必要。
タンクの容量については、調理工程や食器の種類により40リットル、80リットル、200リットル程度のものを準備する必要あり。地域の保健所に確認が必要。 - 保管設備
食材や食器、調理器具などを衛生的に保管できる設備が必要となる。 - 照明設備
適切な作業が行えるように、必要な照度を確保できる設備を準備する。 - 換気設備
換気扇など換気のできる設備の設置が必要となる。 - 区画・間仕切り
運転席部分とキッチンカーの食品取扱い施設とを間仕切り等で区画する必要がある。
詳細な要件は販売する商品や自治体ごとにもことなるため、所管の保健所に要確認です。
上記のように、キッチンカーの設備要件は複雑であるため、専門の事業者に依頼するのが確実と言えるでしょう。
また、最初にキッチンカーを購入して終わりではなく、通常の車両に比べ設備が多岐に渡る分、故障や改修も必要になってきます。
そのため、キッチンカーの製造・販売の実績があり、設備要件にも詳しい事業者を選定し、アフターフォローも含め検討する必要があります。
おわりに
本記事では、特にキッチンカー開業にあたり必要となる手続きについて焦点を当てています。
取りまとめると、キッチンカー開業にあたっては以下のような点に留意する必要があります。
- 手続きは地域によって異なる
各自治体の条例や規則、申請先を確認し、必要な手続きを漏れなく行いましょう。 - 手続きには時間がかかる
開業にあたっては、行うべき手続きが多く、また各手続きには思っているよりも時間がかかります。余裕を持って準備を進めることが大切です。 - 専門家へ相談しよう
キッチンカーの改造や許可申請、飲食業の許可申請など、言ってみれば「本業」以外の部分でやることが多い、ということを理解していただけたかと思います。
メニュー開発やマーケティング、事業計画などの「本業」に集中する為、お金を払ってでも専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
手続きに関しては「行政書士」。車両に関しては「キッチンカー 車両 神奈川県」などでWeb検索すると、取り扱っている事業者がヒットします。
本記事が、キッチンカー開業を目指す方の助けとなれば幸いです。