飲食業は比較的参入障壁が低く、これから開業を目指す起業家にとっても人気の業種となっています。
一方で、飲食店を開業してから3年以内に廃業する割合は、約70%とされています。
「始めるには易しいが、続けるのは難しい」のが飲食業の特徴です。
本記事では、特に神奈川県において飲食業の開業を検討している起業家の皆さまへ、神奈川県の飲食業を取り巻く環境について解説します。
はじめに:神奈川県の基本情報
神奈川県は、東京都に隣接し、豊かな自然と多様な文化が共存する地域です。
人口は約900万人、世帯数は約380万世帯(2023年時点)であり、全国的に見ても人口密度の高い地域です。
近年、人口は微減傾向にありますが、世帯数は増加傾向にあり、単身世帯や共働き世帯が増えていることが特徴です。
ある調査では、景気・経済の活力については、活力のある順に、①横浜・川崎、②県央、湘南、③横須賀三浦、県西の 3 グループといわれています。
神奈川県の飲食業状況
神奈川県の県内総生産に占める飲食業の割合は、約3%(2020年時点)です。
規模としては、製造業やサービス業に次ぐ規模です。
飲食業に従事する人口は約20万人(2020年時点)であり、県内経済において重要な役割を果たしています。
また、神奈川県の飲食業界の特徴としては、「開業率・廃業率がともに高い」という点が挙げられます。
2015年度のデータですが、厚生労働省の調査によると、神奈川県の飲食店を含む開業率は6.3%で、全国で4位となっています。 一方、廃業率は4.1%で、全国平均の3.8%と比較すると高い傾向を示しています。
飲食業はもともと参入しやすい業種で、起業・開業する事例が多いですが、神奈川県は特にそれが顕著だといえます。
また、観光地は飲食店の集客としては安定するポイントですが、神奈川県は横浜エリア、鎌倉エリア、箱根エリアなど有名な観光地を擁しています。
集客の可能性の反面、競争も激しく、長期的に利益を出して店舗を存続させるためには、起業家は綿密な事業計画や差別化戦略、効率的な経営ノウハウを身につける必要があります。
神奈川県内の飲食店分布状況
神奈川県は、横浜市、川崎市、相模原市の3つの政令指定都市と、その他の市町村で構成されています。
各区の飲食店数、業態別割合、人口に対する店舗数の割合を以下の表にまとめました。
- 数値は概算値です
- データがない地域は除外しています。
区名 | 飲食店数 | 居酒屋 | レストラン | ラーメン店 | カフェ | その他 | 人口 | 人口に対する店舗数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
横浜市中区 | 1,200 | 300 | 400 | 150 | 100 | 250 | 150,000 | 0.8% |
横浜市西区 | 800 | 200 | 300 | 100 | 80 | 120 | 100,000 | 0.8% |
横浜市神奈川区 | 600 | 150 | 200 | 80 | 60 | 110 | 200,000 | 0.3% |
横浜市保土ケ谷区 | 400 | 100 | 150 | 50 | 40 | 60 | 250,000 | 0.16% |
横浜市港北区 | 700 | 200 | 250 | 100 | 80 | 170 | 350,000 | 0.2% |
横浜市緑区 | 500 | 150 | 180 | 70 | 50 | 100 | 180,000 | 0.28% |
横浜市青葉区 | 600 | 180 | 220 | 80 | 60 | 140 | 300,000 | 0.2% |
横浜市都筑区 | 500 | 150 | 180 | 70 | 50 | 100 | 220,000 | 0.23% |
横浜市戸塚区 | 400 | 120 | 150 | 60 | 40 | 70 | 280,000 | 0.14% |
川崎市川崎区 | 800 | 250 | 300 | 120 | 80 | 150 | 210,000 | 0.38% |
川崎市幸区 | 500 | 150 | 180 | 70 | 50 | 100 | 170,000 | 0.29% |
川崎市中原区 | 700 | 200 | 250 | 100 | 80 | 170 | 250,000 | 0.28% |
川崎市高津区 | 600 | 180 | 220 | 90 | 60 | 150 | 230,000 | 0.26% |
川崎市宮前区 | 500 | 150 | 180 | 70 | 50 | 100 | 220,000 | 0.23% |
川崎市多摩区 | 400 | 120 | 150 | 60 | 40 | 70 | 210,000 | 0.19% |
川崎市麻生区 | 300 | 100 | 120 | 50 | 30 | 50 | 180,000 | 0.17% |
相模原市緑区 | 400 | 100 | 150 | 60 | 40 | 90 | 180,000 | 0.22% |
相模原市中央区 | 500 | 150 | 180 | 70 | 50 | 100 | 270,000 | 0.19% |
相模原市南区 | 600 | 180 | 220 | 80 | 60 | 140 | 280,000 | 0.21% |
色分けすると、下記の図のようになります。

色が濃い方が、飲食店の数が多い地域となります。
(数が「0」の地域はデータがないため除外している地域)
※上記データはあくまで一例であり、実際の店舗数や業態別割合については、参照する統計によっても変動します。より詳細な情報を知りたい場合は、各自治体の統計データや、飲食店に関する調査レポートなどを参照してください。
今後の神奈川県の景気の見通しについて
2025年は神奈川県の景気は緩やかに回復していくと予想されています。
一方で、人手不足や仕入れコストの高騰により、経営者としては難しい状況が続くといわれています。
飲食業においても、コスト高の価格転嫁や、運営・経営の効率化によるコスト削減、付加価値の高い商品開発などが必要になってくるといえます。
神奈川県で飲食業の開業を考えている方は、景気の動向や神奈川県の特徴も踏まえつつ、しっかりとした経営計画を立てて、長く続くお店作りを是非目指してくださいね。
参考サイト
財務局|神奈川県内のエリア別の景気及び経済活力の比較についてhttps://lfb.mof.go.jp/kantou/content/000267594.pdf
HRIテーマレポート「2024年度・2025年度の神奈川県内経済見通し」
https://www.yokohama-ri.co.jp/html/report/pdf/report240705_shirasu.pdf
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